福原ソープランド 神戸で人気の風俗店【クラブロイヤル】
口コミ一覧
Review
お客様の声
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(「オイラは陽気な飛行機乗り」) 様
ご利用日時:2024年8月25日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。アルバイトの件は、どれだけチャレンジしても、上手くいかない。一社だけ書類審査を通過したらしいが、勤務地を訊いたら静岡県だったので、諦めさせた。
昨日は土曜日。シン太郎左衛門は、履歴書を書く気力をすっかり失って、ダイニングテーブルの上で、A3の履歴書用紙を使って大きな紙飛行機を折っていた。
私はアイスコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいた。シン太郎左衛門はダイニングテーブルの上から紙飛行機を飛ばしては、落下した紙飛行機を回収してまた飛ばした。大きな紙飛行機が視界の隅を横切ると落ち着いて新聞が読めないので、止めるように言おうとしたとき、シン太郎左衛門は、投げた刹那の飛行機にヒラリと飛び乗り、巧みにバランスを取りながら、壁にぶつかる寸前に「はっ!」という掛け声とともに、クルッとトンボを切って床の上に着地した。
中々の芸ではあったが、褒めると付け上がるので、黙って新聞を読み続けた。
さらに芸は進化していく。紙飛行機の上で逆立ちしてみたり、紙飛行機の上から別の紙飛行機を飛ばして、そちらに跳び移ったり、ピエロの扮装で紙飛行機の上で玉乗りしながらジャグリングをしたり。私も思わず拍手してしまった。
「お前は結局何がしたいのだ?」
「職種は特に拘らぬが、時給1200円以上が希望でござる」
「・・・いや、バイトの話ではない・・・まあいい。お前は本当に頑張ってるよ」
「うむ。拙者は実に良く頑張っておる」
「ただ、俺が望むような方向でないことが残念だ」
「そこは父上を見習ってござる」
「どういう意味?」
「父上も毎週頑張ってクチコミを書いておられるが、れもんちゃんが望むものとは、かけ離れてござる。毎回、何となく思い付いたことを書いているばかりでござる」
「そうか・・・まあいい。とりあえず、ピエロの衣装を脱いで、メイクを落としてこい」
そして、翌日、日曜日。れもんちゃんに会った。
やはり、れもんちゃんは素晴らしかった。人生において揺るがぬ真実は2つしかない。日本の夏はクソ暑いということと、れもんちゃんは宇宙一に宇宙一だということだ。
今回も沢山の感動を与えられた。
帰り際、れもんちゃんに尋ねた。
「れもんちゃん、今回のクチコミに希望があったら教えてほしいんだけど」
れもんちゃんは、少し首を傾げて、
「う~ん。シン太郎左衛門が色々な曲芸をするお話」と、それは可愛い笑顔を浮かべた。
「そんなのでいいの?」
「うん、それがいい」と、それはそれは可愛く言うのであった。
帰りの電車の中、シン太郎左衛門に告げた。
「れもんちゃんは素晴らしすぎる」
「それは分かりきったことでござる」
「『優しい、可愛い、美しい』だけでなく、実にモノの分かった女の子だ」
「それも1000年前から知ってござる」
「そうか。ただ、そうであっても、今一度胆に銘じておけ」
「うむ。畏まってござる」
永遠に揺るがぬ真実は、何度でも繰り返し訴えなければならない。
日本の夏は鬱陶しいぐらいクソ暑い。
そして、れもんちゃんは、信じがたいまでに宇宙一に宇宙一なのである。
シン太郎左衛門(「オイラは陽気な飛行機乗り」) 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(金ちゃんの近況報告) 様
ご利用日時:2024年8月18日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。アルバイトの募集に履歴書を送ること、数十回。悉く書類審査でハネられて、不貞腐れている。一度だけ、書きかけの履歴書を覗いてみたが、
氏名:富士山 シン太郎左衛門
生年月日:万延元年 某日
とあって、写真貼付欄には、逆光を浴びたマッシュルームカットの男性と思われるイラストが描かれていた。
「毎回、こんな感じの履歴書を送ってるのか?」
「うむ。用紙はダイソーで購入してござる・・・セリアの方がよろしいか?」
「いや。そこは余り問題にならないと思う」
昨日は土曜日。
10時過ぎに起きた。清々しい目覚めではあったが、盆休みの間、エアコンを付けっぱなしだから、電気料金が思いやられた。
「シン太郎左衛門、起きてるか?」
「うむ。最前より目覚めてござる」
「今日は金ちゃんの家に行くことにした」
「金ちゃんには久しく会っておりませぬな」
「そうなんだ。金ちゃんは家族みたいなもんだから4ヶ月も会ってなければ、普通『最近、どうしてるかな?』と少しは心配になったりするもんだろうが、先週あんな変な夢まで見た後でも、やっぱり『最近、どうしてるかな?』と心配にはならないのだ」
「・・・つまり金ちゃんを家族のようだと感じたのは錯覚であったということでござるな」
「そういうことになる。完全な思い違いだったようだ。それなのに、なんでこんな暑い日に、わざわざ、そんなヤツに会いに行かねばならないんだろう?」
「うむ。確かに理由が見当たらぬ」
「だろ?なんで俺は金ちゃんに会おうなんて思ったんだろう・・・あっ、そうだ。思い出した。理由はあれだ」
私が指差す先を見て、シン太郎左衛門は、
「あれは、超高級ウィスキーでござる」
「そうだ。もう飲む気はないが、プレミアもので売値が10万円以上と聞いてるから、捨てるに捨てられん。だから、金ちゃんに押し付けようと思ったんだ。『要らないけれど捨てられないモノは隣の敷地に移す』、これが俺のモットーだ」
「うむ。実に迷惑なモットーでござる」
二階の洗面所で身支度をしていると、家の周りで鳴く蝉の声がうるさいほどだった。すると、シン太郎左衛門が、
蝉の声を聞くたびに~
目に浮かぶ九十九里浜~
と歌い出した。
「シン太郎左衛門、その歌はいかん」
「ん?それは、なに故?」
「愚か者め。『歌舞伎町の女王』は、椎名林檎の歌だぞ。リンゴはダメだろ」
「おおっ!拙者としたことが!」
「れもんちゃんに知れたら、切腹だぞ。以後気を付けるように・・・あっ、そうだ」
家を出ると、お日様が狂ったように殺人熱光線を発して街を破壊し、それを囃すように蝉たちが鳴き狂っていた。
「ひどい天気だ。これじゃ、地球滅亡の日も遠くないな」
隣家のインターホンを鳴らすと、金ちゃんの声が「どちら様ですか?」
「俺だ。先週もそう言ったはずだ。何度も言わすな」と答えて、門を開けて家の敷地に入って行った。
玄関のドアが開いて、眩しそうに目を細める金ちゃんが顔を出した。
「金ちゃんだ!!全然痩せてない。よかった。安心したぞ」
「一応ダイエット中なんですけど、逆に太りました」
「それでこそ金ちゃんだ!偉い!!」
「なんだか馬鹿にされてる気がするんですけど・・・」
「勘違いもいいところだ。アイスコーヒーを頼む」と言いながら、勝手に家に上がり込んだ。
リビングのドアを開けると、ラッピーが出迎えてくれた。心なしか夏バテのご様子だった。モンちゃんはエアコンの風が直接当たる場所で踞って寝ていた。
「みんな達者でよかったよ。パパさんママさんは和歌山の親戚の家だろ?」と、キッチンからアイスコーヒーを持ってきた金ちゃんに尋ねると、
「え?うちに和歌山の親戚なんていませんよ」
「マジか?くそ~、メタンガスに騙された」
「・・・余り訊きたくないけど、『メタンガス』って何ですか?」
「メタンガス、別名『メタン君』は、お前の成れの果てだ」
「やっぱり訊くんじゃなかった。完全に意味不明だ」
「まあいい。今日、お前を訪ねてきたのは、他でもない。贈り物がある」
「はあ」と金ちゃんは気のない返事をした。
「もっと嬉しそうにしろ。素敵な品々だぞ。まずは・・・これだ」
私はエコバッグからCDを二枚、テーブルの上に置いた。
「ご覧の通り椎名林檎のCDだ。宗教上の理由から我が家に置いておけなくなった」
「宗教上の理由?」
「そうだ。俺は、れもん教徒、つまりレモンチャンだ」
「れもんちゃん?」
「違う。れもんちゃんじゃない。イントネーションが違う。『レモンチャン』だ。『クリスチャン』に引っかけたギャグだ・・・言った当人でさえピンと来てないものを解説さすな!」
そのとき、股間から、
「へへへ、『レモンチャン』とは面白い」
「シン太郎左衛門は黙っとけ。お前が口を出すと、ややこしくなる」
「オジさん、何を言ってるんですか?訳が分からないです」
「ゴメン。シン太郎左衛門のせいだ。全部、こいつが悪い」
「へへへ、『れもん教徒は英語で言うと、レモンチャン』とな。これは笑える」
「こんな変なところにツボがあったとは知らなかった。まあいい。シン太郎左衛門は放っておこう。とにかく、ありがたく押し戴け」
「はい。ありがとうございます」と金ちゃんはCDを手元に引き寄せた。
「おい、待て。お前は、アニソンしか聴かないはずだ。アッサリもらうって、どういうことだ?押し問答の一つも期待してたのに」
「そんな深い理由はないんですけど、くれるんなら、もらいます」
「・・・そうか・・・」
「『レモンチャン』とは傑作」と、引き続きヘラヘラと笑っているシン太郎左衛門に気が散ってしょうがなかった。
「まあいい・・・で、もう一品。販売価格10万円は下らない超高級ウィスキーだ。ちょこっと飲んだが、ほぼサラだ」とボトルを取り出すと、金ちゃんの目が輝いた。
「それも貰っていいんですか?」
「超高級ウィスキーだぞ」
「嬉しいです」
「どうしてだ?お前は、アルコール分解酵素を持ってないじゃないか。こんなの飲んだら即死だぞ」
「ああ、僕が飲むんじゃないんです。会社の総務課の人に、社会保険とか税金とか、いろんなことで凄くお世話になってて、その人に上げようと思うんです」
「CDも?」
「はい。椎名林檎のファンだって言ってたから。その人のご主人が毎晩ウィスキーをチビチビ飲むのを楽しみにしてるらしいです」
そんなことを聞いたら、急に上げるのが惜しくなってきたが、今さら撤回もできなかった。
「・・・金ちゃん、仕事は楽しくやってるか?」
「まあまあですね。のんびりやってます」
「それはよかった」
「オジさんは元気ですか?」
「俺のことなら心配は要らない。俺は、れもん教徒、つまりレモンチャンだ。れもんちゃんの御加護があるから、何の不安もない」
金ちゃんの家を出ると、またしても狂った太陽の熱線と蝉の声に晒された。
シン太郎左衛門は、「いやぁ~、『レモンチャン』とは実によいギャグでござるなぁ。これまで『シン太郎左衛門』シリーズ中、父上が発した最高のギャグでござる」とヘラヘラ笑っていた。何がおかしいのか全然理解もできず、なんか妙に落ち込んだ。
そして、翌日、日曜日。れもんちゃんに会った。
当然、れもんちゃんは、宇宙一に宇宙一で、昨日の軽い落ち込みなど一瞬にして根刮ぎにして視界の彼方に吹き飛ばす、巨大竜巻のような可愛さだった。
れもんちゃんの力は、やはり偉大であった。
少し後日談がある。
今日は火曜日、夜、自宅で、上記のクチコミを投稿しようとしていると、金ちゃんが訪ねてきた。
「オジさんからの贈り物を渡したら、総務課の人、凄く喜んで、お返しを預りました。お盆休みに里帰りして金比羅さんにお詣りをしたときのお土産だそうです」と、ずっしりと重たい紙袋を渡された。
「『お隣さんと仲良しって、いいですね』と言われました」と言って、金ちゃんは笑顔で帰っていった。なんとも気恥ずかしかった。
袋には、丁寧な御礼の手紙と金比羅宮の御守りセットと沢山のお菓子が入っていた。
「シン太郎左衛門、超高級ウィスキーと椎名林檎を追い出したと思ったら、もっと処分に困るものたちがやって来た。お菓子は食べりゃいいが、他の二つは本当に困る・・・でも、俺は、れもん教徒で優しさをモットーにしてるから、人の好意を無にすることが出来ないのだ・・・」
「へへへ、父上はレモンチャンでござる」とシン太郎左衛門は、何がおかしいのか、相変わらずヘラヘラと笑っていた。
「お前もだろ?」
「うむ。拙者も敬虔なレモンチャンでござる」
もらった茶饅頭をモシャモシャ食べながら、この後日談を記した。これから投稿ボタンを押す。
シン太郎左衛門(金ちゃんの近況報告) 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(あるいは「見知らぬ隣人」) 様
ご利用日時:2024年8月11日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。理由は知らないが、ここ最近ずっとアルバイトを探している。当然のことながら、上手く行かない。先日も居酒屋チェーンから不採用の通知を受けて、凹んでいる。「ホールは無理でも厨房なら行けると思っておったが・・・」と、世の中を舐めた発言をしていた。
さて、昨日の土曜日から職場は9日間の盆休みに入った。しばらく職場に行かなくてよい解放感も手伝って、目覚ましもかけず、グーグー寝ていたが、10時前には暑くて目を覚ました。
親子揃って、「暑い!」と声を上げて寝床から飛び出した。
「なんて暑いんだ!この地球は、俺に何か恨みでもあるのか?」
「父上、エアコンを入れましょうぞ」
「うん・・・いや、待て。今日から盆休みだ。9連休の間、毎日エアコンをガンガンかけて暮らすのは、いくらなんでも電気代が勿体ない。盆休みは、隣の家で過ごそう」
「実にド厚かましい話でござるな」
リュックサックに替えの下着と本を数冊詰めて、背負うと、
「準備完了だ。行こう」
「うむ。金ちゃんに会うのは久しぶり。この4ヶ月ほど会っておりませぬな・・・父上、枕は?」
「おっ、そうだ。忘れるところだった。俺は枕が変わると寝れんからな」
外はお日様が暴れまわっていたので、馬鹿みたいに暑かった。照り付ける日差しの中、枕を小脇に抱え、隣の家のインターホンを鳴らした。
「どちら様ですか?」と金ちゃんの声がしたので、「俺だ」と答えて、門を開けて家の敷地に入って行った。
玄関のドアが開いたので、金ちゃんが顔を出すのかと思いきや、ドアの隙間から覗いた顔は想像していたものではなかった。
「おっ、お前は、誰だ!」と思わず叫んでしまった。
「僕は・・・オジさんが言うところの『金ちゃん』です」
「なんだと?嘘を言うな。お前のどこが、金ちゃんだ。金ちゃんはデブだ。長年の不規則な睡眠とだらしない食生活が産み出したデブの傑作だ」
「ここ半年ほど、毎朝5時に起きて、剣道の稽古をしてたら、こんなになってしまいました」
「ふん、そんな嘘に騙されるもんか!引き締まった体型だけじゃない。顔が全然違うじゃないか。お前は、今では死語となった『ジャニーズ風』の、爽やかなイケメンだ。金ちゃんは満月のような丸顔だ。お前は眼鏡もかけてないし、明らかに別人だ」
「痩せすぎて、眼鏡がズレるようになったから、コンタクトにしました」
「うっ・・・確かに、声と話し方は金ちゃんだな。だが、俺は認めん!金ちゃんパパと金ちゃんママは、どこだ?」
「父さんと母さんは、お盆で和歌山の親戚の家に行ってます」
「やっぱりそうだ!お前、金ちゃん一家に何をした?殺したな。目的はなんだ?」
「いやいや」
「何が『いやいや』だ。目的は分かってぞ。金ちゃん一家に成りすまし、俺を騙して、れもんちゃんの秘密を聞き出す積もりだろ!貴様は、れもんちゃんの特殊能力を使って世界制服を狙うテロリスト集団の一味だ!」
「オジさんのメインテーマは、相変わらず、『れもんちゃん』ですね」
「当然だ・・・お前が手に持ってるのは何だ!」
「これ?モンちゃんのオヤツのチュールです」
「チュール型のスタンガンだな!」
「・・・オジさん、暑いし蚊が入るから、早く中に入ってください」
「・・・うん、そうしてやろう。言っておくが、俺は、れもんちゃんの秘密について、何一つ知らんからな。俺が知っているのは、『れもんちゃんには可愛い秘密が沢山ある』ということだけだ。どれだけ拷問しても、それ以上のことは引き出せんぞ」
そう言いながら、私とシン太郎左衛門は危険を承知で金ちゃん宅に足を踏み入れた。
エアコンが効いたリビングに招き入れられて、アイスコーヒーを供された。そんな気の効いた振る舞いは、金ちゃんらしくなかったが、挨拶に来たラッピーは、やはり美しかった。
「オジさんは、ブラックでしたよね」と言ったスリムなイケメンの足元に、妖しい色気を発する美しいキジトラ猫が纏わりついていた。
「モンちゃん、チュールの続きを上げるね」とイケメンはしゃがんだ。
「大人の女の色気を発散する、この猫がモンちゃんか?・・・子猫の面影が、すっかりなくなってしまった・・・」
「前に会ってときから4ヶ月経ってますよね。すっかり美人さんになったでしょ」
「うん・・・れもんちゃんには到底太刀打ち出来んが、猫としてはかなりのものだ」
モンちゃんは無心にオヤツを舐めていた。
「しかし、お前、本当に見違えてしまったぞ。今では死語となった『ジャニーズ』・・・いや、若い頃の福山雅治にそっくりだ」
「そうですか?」
「まるで悪夢を見てるようだ・・・お前は、もう金ちゃんではない」
金ちゃんの「成れの果て」は、爽やかな笑みを浮かべて、「もう金ちゃんじゃないのかぁ・・・なんか寂しいですね。『金ちゃん』じゃなく『銀ちゃん』ですか?」
「何だと?下らん!『金ちゃんじゃなくて銀ちゃん』なんて、恥を知れ!お前のような下らんことを言うヤツには、シルバーやブロンズでも勿体ない。お前なんて、メタンガスだ。これから、お前を『メタン君』と呼ぶ。ちなみに、れもんちゃんは、ダイヤモンドだ」
福山雅治似のメタン君は、ヘラヘラと笑うだけだった。
「ところで、この部屋、エアコンが効いてるか?段々暑くなってきた気がする」
「はい。26度に設定してますよ」
「嘘を吐け!どんどん室温が上がって、息苦しくなってきた。お前、本当に世界制服を目論むテロリストの一味だろ。こんな陰湿な拷問にかけても、俺は、れもんちゃんの秘密なんて知らんから、何も話すことはない」
「僕がテロリストに見えますか?」
「いや、見えん。そもそも俺が一目でそれと見抜けるようなマヌケなテロリストなんているもんか。そんなことはどうでもいい。俺が、このクソ暑い部屋の淀んで重い空気に逆らってでも言いたいことは、ただ一つ。れもんちゃんのマジカルパワーを悪用するなんて無理だ、ということだ。れもんちゃんのマジカルパワーは、どんな使い方をしても世界がドンドン幸せに満ちて平和になってしまうのだ!!」
拳を激しく上下させながら、そんな熱弁を振るっていると、
「何をぐちゃぐちゃ言っておる!さっさと起きて、エアコンを入れてくだされ!」と、シン太郎左衛門の声がした。
目が覚めた。夢を見ていたのだ。全身汗まみれだった。
「大変に嫌な夢を見た」
「そんなことより早くエアコンを頼みまする」
「分かった」と、リモコンに手を伸ばした。ピッ、ピッと音を立て、エアコンが動き出した。
「いやぁ、実に気分が悪い夢だった。シン太郎左衛門、知ってたか?福山雅治と一つ部屋で過ごすのは、本当に居心地が悪いんだぞ」
「何の話でござるか」
「・・・まあいいや。元々、俺たちにとって、居心地のいい場所は、れもんちゃんのところしかないんだしな」
そして、翌日、日曜日。れもんちゃんに会いに行った。れもんちゃんは、やはり宇宙一に宇宙一で、れもんちゃんのいる場所は、やはり宇宙一に宇宙一の天国であった。エアコンも、ちょうどいい具合に効いていた。
帰り際、れもんちゃんに「今回のクチコミは夢の話でいい?」と訊くと、
「うん、いいよ。去年の夏も、夢のお話が一杯だったね」と、それはそれは可愛い笑顔を浮かべてくれるのであった。
確かに、れもんちゃんの言うとおりだった。しかし、実は、れもんちゃんの存在自体が素敵すぎる夢のようなものだから、『シン太郎左衛門』シリーズは、程度の多少はあれ、すべて夢の話なのである。
シン太郎左衛門(あるいは「見知らぬ隣人」) 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門、酔って候 様
ご利用日時:2024年8月4日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。近所の歯科医院で受付のアルバイトを募集中と知り、勇んで毛筆を揮って志望理由書を書いている最中に、その歯科医院から「志望理由書が酷すぎるから不採用」との電話がかかってきて、周りをキョロキョロ見回している、そういうタイプの武士である。
先週の金曜日、遅くまで仕事だったが、翌日の土曜日は休みだった。帰宅して、シャワーを浴びると、シン太郎左衛門に、「明後日は、れもんちゃんに会う大事な日だ。明日は1日寝て過ごして、明後日に備えよう」
「うむ。暑いし、それがよかろう。拙者、バイトを探しておるが、中々上手く行かぬ。明日もやることがない」
「ついては、これから家呑みをする」
「父上が家で酒類を口にするとは珍しい。どういった風の吹き回しでござるか。養命酒でも呑みまするか」
「違う。明日何もしないと決めたら、普段やらないことをしたくなった。超高級なウィスキーを飲む。去年の暮れ、我が社の忘年会のビンゴ大会で当たったものだ。一等だというから小躍りして喜んだのに、賞品がウィスキーと知ってガッカリした。超高級なんて恩着せがましく言われても、普段全く酒を飲まん俺には何の有り難みもない。『重くて持ち帰るのが面倒なだけだから、末等の駄菓子の詰め合わせに代えてくれ』と頼んだのに聞いてもらえんかった。その日以来ずっと放置してきた超高級ウィスキーを飲む」
「うむ。勝手に呑まれよ。拙者は巻き込まれたくない」
「一緒に呑もう」
「嫌でござる。隣の金ちゃんでも誘えばよい」
「金ちゃんはダメなんだ。あいつは体質的にアルコールを受け付けん。小学校のとき、おばあちゃんの飲みかけの養命酒がお猪口に微かに残っていたのを飲んで、急性アルコール中毒で救急車が呼ばれたらしい」
「金ちゃんは実に使えぬヤツでござる。しかし、拙者も酒は呑めん。そもそも口がない」
「え?そのオシッコが出る穴は口じゃなかったの?」
「違う。どこの誰が口からオシッコをしまするか。どちらかと言えば、鼻の穴に近い何かでござる」
「そうだったのか・・・と言って、鼻の穴からオシッコをするヤツも知らんけどな。まあいい。とにかく高級ウィスキーを呑むぞ」
シャワーから出たままの姿、つまり、全裸で肩にバスタオルを掛けただけの格好で、ツマミ(茹で卵)を用意した。
「よし。それでは始めよう」と、私はウィスキーの栓を抜いて、グラスにほんの少しだけ注いだ。
「シン太郎左衛門、お前もストレートでいいか?」
「拙者は呑まん。正確には、『呑めん』」
「格好だけでいいから付き合え」と言ったものの、実際どのように「付き合わせ」たらよいのか分からなかった。
「あっ、そうだ。こうしよう」
私はティッシュを二、三枚取って、グラスのウィスキーを染み込ませて、シン太郎左衛門にペタッと被せた。
「なにをする!」とシン太郎左衛門は怒り出した。
「新兵衛の砂糖水と同じ理屈だ。適当にチューチューと吸え」
シン太郎左衛門は「なんとも嫌な臭いでござる。外してくだされ!」とか喚いていたが、無視してグラスを手にとり、琥珀色の液体を少しばかり口に含んでみた。
「う~ん、舌が焼ける。これのどこが超高級なのか全く分からんな。しょせんウィスキーは俺の好みではない」と、後は卵ばかりモシャモシャと食べていた。茹で卵を6個食べ終えると「こんなこと、ちっとも面白くない。以上で飲み会を終了とする」とシン太郎左衛門からティッシュを剥がすと、ヤツの目はすっかり据わっていた。
「シン太郎左衛門・・・随分と呑んだな」
シン太郎左衛門は真っ赤な顔で酒臭い息を吐きながら、「父上、『れもんちゃんダンス』を踊ってよろしいか」
「いや・・・止めておいた方がいいぞ。とてもダンスが出来る状態には見えん」
「なに!誰が『ダンスをする』と言った!」
「・・・お前がだよ」
「拙者、ダンスなどせぬ。『れもんちゃんダンス』を踊ると言ったばかりでござる。『れもんちゃんダンス』はダンスではない。『れもんちゃんダンス』は、むしろ、れもんちゃんでござる」
「・・・ごめん。なに言ってるか、全然分かんない」
「なにっ!れもんちゃんファンを騙る変態オヤジめ!貴様に、れもんちゃんの何が分かる!そもそも、れもんちゃんは・・・れもんちゃんは・・・」と、シン太郎左衛門は突然ポロポロと落涙し、「れもんちゃ~ん!!」と叫んだ。
酔っ払ったシン太郎左衛門は本当に始末に負えなかった。怒り上戸で、泣き上戸で、とにかく面倒臭かった。全く理解できない理由で長々と説教をされた。
「分かった、分かった。俺だって、れもんちゃんの素晴らしさは十分分かってるって」
「いや、足らん。全くもって、れもんちゃんに関する理解が足らん。れもんちゃんに申し訳が立たん。今すぐ腹を切りなされ・・・いや、父上は武士でないから腹を切るのは筋違い。それよりも、父上、これから、れもんちゃんに会いに行きましょう」
「無理だな。れもんちゃんは、ふと思い付いて会いに行けるような女の子ではない。一週間前に予約を取れてなければ、まず会えない」
「そんなことは言われずとも、知っておる。福原小学校の子供たちでも知っておる。で、父上は、この状況を見越して、ちゃんと予約を取っておいてくれたのでござろうな」
「いや、取ってない。こんなことになるなんて予測できなかったからな。それにもう12時過ぎだ。クラブロイヤルの営業時間は終わっている」
「なんと、これだから馬鹿オヤジは困る。れもんちゃんは宇宙一に宇宙一でござるぞ」
「知ってる。そんなことは福原小学校のみんなも知ってる」
「情けない・・・こんな夜に、れもんちゃんに会えないとは・・・れもんちゃ~ん!!・・・れもんちゃ~ん!!」
隣の家で、ラッピーが一声、ワワンっと吠えた。「うるさいよ。さっさと寝なさい」というお叱りだろうが、シン太郎左衛門はなおも声を限りに、「れもんちゃ~ん!!」と絶叫し続けた。
当然ながら、私は、二度とコイツにはアルコールを勧めまいと固く誓うのであった。
そして、今日は日曜日。れもんちゃんに会った。
こんなに可愛くて、気立てのよい女の子が本当に存在していいのだろうか?と心配になるほど、可愛くて気立てがよかった。危険なまでに宇宙一に宇宙一だった。
ところで、れもんちゃんが宇宙一に宇宙一であることは、20世紀の初頭、かのアインシュタインによって理論的にも証明されているが、その時点では、れもんちゃんがまだ生まれていなかったため、アインシュタインはこの偉大な発見の公表を見送った。もし、発表していれば、その功績をもって、アインシュタインは生涯2回目のノーベル物理学賞を受賞していたことは、その界隈の学術関係者の間では比較的よく知られたことなのである。
シン太郎左衛門、酔って候 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(あるいは、不可能を可能にする方法) 様
ご利用日時:2024年7月28日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。武士のくせに我慢というものを知らない。暑いのが大の苦手だ。私は普通のサラリーマンだから当然暑いのが苦手だ。だから親子揃ってグッタリしている。れもんちゃんに会いに行くときは二人とも元気でニコニコしているが、それ以外のときは揃って苦悶の表情を浮かべて、死んだようにグッタリしている。
昨日は土曜日、れもんちゃんに会いに行く日ではない上に出勤だった。朝、起きると親子揃ってカレンダーを睨み付け、今日という1日を地上から抹消できないか企んでいた。
「今日もまた、暑いという以外に何の特徴もない、おまけに出勤日というゴミのような1日が始まってしまった」
「うむ。それにしても、ひどい暑さでござる」
「そもそも俺は仕事が大嫌いだ。この前、社長が若い社員に『仕事を通した自己実現』とか宣っていたから、思わず『けっ!寝言は寝て言え』と言ってしまって、大顰蹙を買った。頭の中で言ってるつもりが、鼻の穴から漏れ出したんだと思う」
「これまでよくクビにならなかったものでござる」
「いや。引き続き給料をくれるなら、むしろクビにしてもらいたい」
「そんなことが許されまするか」
「あれこれ思案してみたが、そういうことは、どうやら不可能なようだ。望みがあるとしたら、れもんちゃんだ」
「・・・れもんちゃんでござるか」
「そう、ここでもやっぱり、れもんちゃんだ。この世で、不可能を可能に出来るのは、れもんちゃん以外にいない。不可能なこと、つまり、クビになりながら給料をもらい続けるという状況を実現しようと思えば、俺は、れもんちゃんになるしかない」
「・・・父上が、れもんちゃんになるとな。そんなことが出来まするか」
「やってみないと分からん」
「しかし、父上が、れもんちゃんになると、何かと不都合でござる」
「だろ?まず、俺が、れもんちゃんになったら、お前はお払い箱だ。女の子に息子は要らんからな」
「それは困ったことになりまするな」
「そうなんだ。いくつになっても、悩みは尽きないよ」
シン太郎左衛門は神妙な顔付きで頷くと、
「ところで、父上、最近の『シン太郎左衛門』の下らなさは目に余りまするな」
「うん、そうだな。読むに耐えん。でも、それは前からずっとそうだ。そもそも、本当にオチンと話をする男なんているのかよ。そんなヤツがいたら確実に病気だろ。『明らかに理性的な行動が見込めないお客様』だから、クラブロイヤルの注意事項に違反してる。出禁にすべきだ」
「・・・父上、この炎天下、仕事に行くのが嫌すぎて、頭がおかしくなったものとお見受けいたす」
土曜日、我々親子はそんな会話をした。
そして、翌日、つまり今日は日曜日。れもんちゃんに会いに行った。
クラブロイヤルに到着すると、いつも最初にトイレを借りる。すでに駅のトイレで用は済ませているので、別に便意を催しているわけではない。
知っている人には知ってのとおり、トイレのドアの内側には「注意事項」が張り付けてある。便座に腰掛けると、注意事項はちょうど目の高さに来る。私とシン太郎左衛門はその一つ一つを声高らかに読み上げていった。「18歳未満及び高校生の方のご利用は固くお断りします・・・明らかに理性的な行動が見込めないと受付が判断したお客様・・・」。これから、れもんちゃんに会える嬉しさから、親子共々元気一杯声を張り上げる。これは、毎週何があっても欠かせないルーチンである。
そして二人が最後の注意事項を読み上げ終わると、どこからともなく、「Security clearance verified.」と、いかにも機械的な合成音声が流れ、それに続いて小窓の外から巨漢の外国人を思わす野太い声が「毎回世話を焼かせやがって。確認完了だ。れもんちゃんに会ってよし」と言うのが聞こえたので、私とシン太郎左衛門は小さく頷いた。
れもんちゃんは宇宙の神秘であり、人類の宝物なので、オチンと話をするような変人には、かくも厳重なセキュリティ・チェックが課せられているのである。
さて、与太話はともかく、れもんちゃんは、今回もやはり宇宙一に宇宙一だった。
言うまでもなく、今回も、れもんちゃんは、また数々の不可能事を可能にしたのであったが、れもんちゃんにとって、そんなことは季節外れのタンポポの綿毛を青空に吹き飛ばすぐらい容易なことなのであった。
シン太郎左衛門(あるいは、不可能を可能にする方法) 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門とざるソバ(あるいは「どうでもいい話の百連発」) 様
ご利用日時:2024年7月21日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。Wi-Fiスポットのバイトはクビになったらしい。やはりアンテナになるには材質的に無理があったのだろう。
日曜日、れもんちゃんに会う日の朝、私はソバを茹でていた。
「シン太郎左衛門、今日の朝食は、ざるソバだ」
「それはよい。父上はソバ派、うどん派のどちらでござるか」
「断然、ソバ派だ。時々無性にうどんが食べたくなるが、それでも、やっぱりソバ派だ。ソバにも色々あるが、何と言っても、俺はざるソバが・・・こんな話、聞いてて楽しいか?」
「全く楽しくない。実に下らぬ話でござる」
「お前が下らん質問をするからだ!」
茹でたソバを冷やして、ソバ皿に盛り付けた。
「よし、ざるソバが完成した。竹スノコのお陰で本格的に見える。ざるソバを作るなんて10年ぶりだ。そうだ、記念に写真を撮っておこう。う~む、なかなかよく撮れた。味もいいに違いない。では、まずはツユも付けずに一口・・・う~ん、不味い!!こんな不味いソバ、生まれて初めて食った。さっきの写真は消そう。いや~、飛んでもない不味さだな」
「そんなにひどい味でござるか」
「お前も一口食ってみろ」
「いや、遠慮いたしまする」
「そう言わずに食ってみろ。こんな不味いもの、滅多に食えんぞ」
「拙者は天下無双の美食家でござる。れもんちゃん以外は拙者の口に合わぬ」
「そうか。それは大変な美食家だな。れもんちゃんがいなくなったら飢え死にだ。だが分かる。一度、れもんちゃんを知ってしまうと、当然そうなる」
「うむ。それに、れもんちゃんは、いい匂いがいたしまする」
「うん。れもんちゃんは、フローラルでフルーティーな香りがするからな」
「うむ。間違いござらぬ」
「香水などではない。れもんちゃんの持って生まれた匂いがフローラルでフルーティーなのだ。うん。本当だ。れもんちゃんは凄いよな・・・しかし、それにしても、不味いソバだなぁ。でも、よく考えたら、『王さんの中華レシピ』に載っていない料理で、俺に作れるのは、ゆで卵だけだった。10年前にざるソバを作ったときにも、確か同じ目に遭ったような気がする・・・もうこれ以上は食えん」
「まだ2口目でござる」
「いや、もう限界だ。見た目はソバだが、おそらく別の何かだ。口に入れた途端、息が止まりそうになる。これ以上食べたら、命に関わる」
そんなことを話した。
そして、れもんちゃんに会った。当然宇宙一に宇宙一で、天下の美食家を自認するシン太郎左衛門を唸らせる素晴らしさであった。
そして、れもんちゃんは、フローラルかつフルーティーであった。
本当に今日も暑かった。帰り道、神戸駅の近くで、かき氷を食べた。
シン太郎左衛門とざるソバ(あるいは「どうでもいい話の百連発」) 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門と『れもんちゃんダンス』 様
ご利用日時:2024年7月14日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。余り大きな声では言えないが、最近はダンサーを目指しているようだ。
今日は日曜日。れもんちゃんに会う日。
朝、ゆで卵を作った。もちろん、鑑賞用ではなく、食べるために作ったので、殻を剥いて、口まで運んだ瞬間、シン太郎左衛門が重々しい口振りで、「父上、『れもんちゃんダンス』を踊ってよろしいか」と訊いてきた。
「・・・『踊らないでほしい』と言ったら聞き届けてくれるのか?」
「聞き届けるわけがない。では、踊ろう」
シン太郎左衛門は、ダイニングテーブルの上に跳び移ると、「ラジオ体操第一~。腕を前から上にあげて大きく背伸びの運動~」と声をあげながら、クネクネし始めた。
前回も書いたが、シン太郎左衛門作の『れもんちゃんダンス』とは、早い話が、ラジオ体操の曲に乗せて身を捩らすだけのことで、『ダンス』と呼ぶのも烏滸がましい代物だった。加えて、要所要所でウインクをするのだが、シン太郎左衛門のウインクは見ていて大変に腹が立つ。れもんちゃんの新作動画では、可愛いウインクが素晴らしいアクセントになっている。それは、全宇宙のれもんちゃんファンが満場一致、全員起立の上、拍手をもって承認するところであるが、シン太郎左衛門に動画を見せると色々と面倒なことになるから、当然一切教えていない。つまり、れもんちゃんの蠱惑のウインクに触発されたわけでもないのに、シン太郎左衛門が取り付かれたようにウインクを連発するようになったことは謎であった。
れもんちゃんのウインクの件はともかく、目の前でクネクネ動くオチンからウインクをされる状況は決して愉快なものではない。段々、苛立たしくなってきて、「そもそもだ」と私は憤然として口火を切った。「なんでオチンに目が付いているのだ?その時点でおかしい。さらに、ぎこちなくウインクするオチンは、とても不気味だ」
「うむ。最初はそう言っていても、やがてこの不気味さがクセになるのでござる」
「ならんね。俺はそういうタイプの人間ではない。俺がクセになるのは、趣味の良いものだけだ。れもんちゃんが、いい例だ。そもそも、この踊りのどこが、『れもんちゃんダンス』なんだ?」
「うむ。れもんちゃんと言えば、可愛いウインクがトレードマーク。新作の動画が巷で大変な話題になってござる」
「・・・お前、どうして、それを知ってるの?」
「拙者、最近、副業でWi-Fiのアンテナをやっておるゆえ、巷の情報に通じてござる」
「・・・そうだったんだ・・・お前・・・頑張ってるな」
「うむ。拙者、頑張っておる」
そんなことを話した。
そして、れもんちゃんに会った。
もちろん、れもんちゃんは、宇宙一に宇宙一だった。
親子ともども宇宙一幸せだった。
というようなことを翌日投稿しようとしていたら、立て続けにスマホのシステムアップデートに失敗して、スマホの調子がすっかりおかしくなった。シン太郎左衛門のWi-Fiスポットのせいだと思う。
そんなわけで今回、投稿が大幅に遅れてしまったのである。
シン太郎左衛門と『れもんちゃんダンス』 様ありがとうございました。
けい【VIP】(23)
投稿者:モアイ様
ご利用日時:2024年7月20日
初めての利用
写真も顔出しだったし、SNSも覗いて即指名予約しました
入室し暫くお喋り
他の方も言われてた通りトーク力はハンパない
キス→ベットでイチャイチャ
そのまま2回戦までヤッてしまいました
少し話してマットへ
しっかり攻めてもらいました
最高の体験が出来ました
モアイ様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門の熱暴走 様
ご利用日時:2024年7月7日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。暑いのが大の苦手で、夏日中の外出を忌み嫌う。れもんちゃんに会いに行くのだけは、もちろん例外。それ以外の用事だと、じきに怒り出す。
昨日、土曜日、東京に出張した。昼過ぎに新幹線で品川駅に到着して、在来線に乗り換え、取引先の最寄り駅で降りると、目が回るような日差しだった。
取引先の自社ビルは駅から歩いて5分程度と聞いていたが、初めて行く場所だったからグーグルマップのナビを使った。
ガンガンの日差しの中、ナビに命じられるまま、汗を拭き拭き歩いていると、シン太郎左衛門が文句を言い出した。
「暑い!!」
「そんなこと、お前に言われんでも分かってる!暑いのは、お前だけではない。むしろ、直射日光を浴びてる俺は、お前の倍暑い」
「父上、喫茶店に入って、夕方、日が沈むまで待ちましょうぞ」
「そんな余裕をぶちかましてられるほど時間がない」
汗を拭うと、私は先を急いだ。ナビの言うとおり歩き続けたが、思いのほか遠い。かれこれ15分ほど歩かされて、「目的地に到着しました」と言われたが、どうにも実感が湧かない。二階建ての小さなビルの前に立った私の目の前にあるのは「西東京ダンススタジオ」の看板だった。
「練習生、募集中!!」のポスターを眺めながら、「なんか変な所に連れて来られた。とんだ勘違いだ。俺のどこを見て、ダンスの要素を感じたんだろう?」
「何をごちゃごちゃ言うておられる。早く喫茶店に入りましょうぞ」
「そんな時間はないし、見渡す限り喫茶店はない」と、もう一度ナビに訪問先の名称を入れて検索すると、今度は所要時間2時間半と表示された。
「ダメだ。暑すぎて、スマホが熱暴走したようだ。適当なことを言いやがって。これじゃ、シン太郎左衛門と五十歩百歩だ」
「なに、熱暴走とな。どれどれ、拙者が見て進ぜよう」
「見せられるか!こんな人通りのあるところでオチンを出したら、俺が熱暴走してるヤツだと思われてしまう」
「なるほど。それでは、そろそろ家に帰りましょう」
「・・・しばらく静かにしておけ」
通り掛かった人物に尋ねたら、500メートルほど引き返せと教えてくれた。その言葉どおり、無事に目的地に到着できた。
これが昨日の出来事だった。
そして、今日、日曜日、れもんちゃんに会う日。
朝起きて、新聞を読みながら朝ごはんを食べていると、シン太郎左衛門が『れもんちゃんダンス』を踊り始めた。
『れもんちゃんダンス』というのは、昨日、帰りの新幹線の中でシン太郎左衛門が考案した踊りなのだが、ラジオ体操の音楽に合わせて踊る、要所要所でウインクをするセクシーダンスだった。これ以上は、言葉では上手く説明できない。
新聞を読み終えると、食器を洗い、歯磨きをした後、「よし。シン太郎左衛門、そろそろ出発の時間だ」と告げると、シン太郎左衛門は踊るのを止めて、満面の笑みで、
「いよいよ待ちに待った『れもんちゃんタイム』でござるな」
「そうだ。今日は『れもんちゃんデー』だ」
「うむ。昨日は『れもんちゃんイブ』でござった」
「そうだ。ところで、その『れもんちゃんダンス』は、踊ってて楽しいか?」
「・・・微妙でござる。れもんちゃんが踊ってくれれば、見てて楽しいとは思いまする」
「それは、そうだが、お相手が、れもんちゃんなら、何をしたって楽しい時間になるに決まってる」
「うむ。間違いござらぬ」
ということで、れもんちゃんに会ってきた。
念のために言っておくと、やっぱり、れもんちゃんは宇宙一に宇宙一であった。
帰りの電車の中、れもんちゃんの爽やかな色気を浴び続けて熱に浮かされたシン太郎左衛門は、興奮の余りほとんど叫ぶような大声で、ここに記して人目に晒すことが許されないような生々しい言葉を使い、れもんちゃんを讃え続けた。そして、その都度私にも同意を求めてきた。
「熱暴走した武士は手に負えん・・・うるさすぎる」
れもんちゃんの余韻にマッタリと浸るのを邪魔された私は本当に不機嫌になっていくのであった。
シン太郎左衛門の熱暴走 様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門と「宇宙一」の証明 様
ご利用日時:2024年6月30日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。どうしようもなく怠け者の穀潰しである。
今日は日曜日、れもんちゃんに会う日。
朝9時に目を覚ますと、シティ・ヘブンのれもんちゃんのページで新しい動画を繰り返し見ては、胸の中で「今回の動画は、大変によく出来ている。もちろん実物には及ばないが、自然な表情とか、れもんちゃんの良さが引き出せている。れもんちゃんは、やはり素晴らしい」と呟き、深々と頷いた。
いつまでも、動画ばかり見てもいられないので、朝御飯の用意をして、新聞を取りに表に出た。最近、近所に引っ越してきたMさんの家のお爺ちゃんが犬の散歩をしていた。
「あっ、Mさんのうちのお爺ちゃんだ!」と言うと、シン太郎左衛門は気のない様子で、「そんな嬉しそうに声を上げるほどの人物でござるか?」
「お前も見てみろ。Mさんのお爺ちゃんは一見の価値があるぞ。ツルっ禿げで無帽で眼鏡もしていない。でんでん虫みたいにのんびりと歩いているし、むっちゃツルンとしてノメ~っとした顔してるから、真面目に観察しないと、正面から見ているのか、後ろ姿なのか区別が付かん」
「そんなことがありまするか」
「ある。今も遠目に俺が見ているのが、お爺ちゃんの顔面なのか、後頭部なのか、全然分からない・・・って、冗談のつもりで言っていたが、実際、前後ろの区別がつかん。こんなことって、本当にあるんだな」
「・・・単に、加齢による視力の衰えでござろう」と、シン太郎左衛門は吐き捨てるように言った。
確かに日々衰えを感じる。れもんちゃんだけが、私の支えだった。
新聞の日曜版は読み応えがない。トーストを噛りながら斜め読みをしたが、れもんちゃんの動画がリニューアルされたという大事件の記事もないし、すぐに放り出した。代わりに、昨日から読みかけの本を手に取った。
「父上、最近よく本を読んでおられまするな。小説でござるか」
「小説なんて国語の教科書以外で読んだ記憶がない。俺はフィクションが嫌いだからな」
「確かに『シン太郎左衛門』シリーズは、ノンフィクションでござる」
「・・・お前、それ、嫌味で言ってるだろ?真面目な話、『シン太郎左衛門』シリーズは、『れもんちゃんは宇宙一に宇宙一であること』の、数学的に厳密な証明を目指して書かれているのだ。しかし、筆者の真摯な想いにもかかわらず、毎回、変な武士が登場して、ぶち壊す。本来、『シン太郎左衛門』シリーズに、シン太郎左衛門は出て来てはならんのだ」
「では、金ちゃんなら出て来てよいのでござるか」
「金ちゃんもダメだ。当然Mさんのうちのお爺ちゃんもダメだ。こういう連中がいるから、話がおかしくなる。『シン太郎左衛門』シリーズは数式だけを使って、『れもんちゃんの宇宙一性』を証明することに徹するべきなのだ」
「なるほど。流石は、ホカホカのカイロ大学数学科の主席卒業者の言うことは違いまするな」
「また嫌味なことを言いやがって。俺は確かに数学科の卒業だが、本当は最低の成績で、お情けで卒業させてもらったのだ。もちろんカイロ大学なんて嘘だ。そもそも、このジメジメとクソ暑い日に、カイロだのコタツだの鍋焼きうどんだの、暑苦しいものの名前を出すな」
「うむ。畏まってござる」
「それにしても、今日はジメジメとして暑いなぁ。早くれもんちゃんに会わなければ、やってられん」
「うむ。れもんちゃんは爽やかで涼やかでござる」
「そうだ。それに、れもんちゃんとだと暑苦しいことをするのも大変楽しい」
「うむ。『エアコンの壊れた二畳足らずの個室で、全裸の力士10人と朝までカラオケ』という状況とは雲泥の差でござる」
「・・・そんな状況になったことがあるのか?」
「ない」
「そんなら言うな。そんな馬鹿なことを聞いたせいで暑さが増した」
というような下らない話をした後、れもんちゃんに会いに行った。
れもんちゃんは、やはり宇宙一に宇宙一だった。新しい動画が素敵だと言うと、れもんちゃんは「うん、頑張った」と、それはそれは素敵な笑顔を浮かべるのだった。
(証明終わり)
シン太郎左衛門と「宇宙一」の証明 様ありがとうございました。
PREV
[
1
] [
2
] [3] [
4
] [
5
] [
6
] [
7
] [
8
] [
9
] [
10
] [
11
] [
12
] [
13
] [
14
] [
15
] [
16
] [
17
] [
18
] [
19
] [
20
] [
21
] [
22
] [
23
] [
24
] [
25
] [
26
] [
27
] [
28
] [
29
] [
30
] [
31
]
Next>>
昨日は土曜日。シン太郎左衛門は、履歴書を書く気力をすっかり失って、ダイニングテーブルの上で、A3の履歴書用紙を使って大きな紙飛行機を折っていた。
私はアイスコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいた。シン太郎左衛門はダイニングテーブルの上から紙飛行機を飛ばしては、落下した紙飛行機を回収してまた飛ばした。大きな紙飛行機が視界の隅を横切ると落ち着いて新聞が読めないので、止めるように言おうとしたとき、シン太郎左衛門は、投げた刹那の飛行機にヒラリと飛び乗り、巧みにバランスを取りながら、壁にぶつかる寸前に「はっ!」という掛け声とともに、クルッとトンボを切って床の上に着地した。
中々の芸ではあったが、褒めると付け上がるので、黙って新聞を読み続けた。
さらに芸は進化していく。紙飛行機の上で逆立ちしてみたり、紙飛行機の上から別の紙飛行機を飛ばして、そちらに跳び移ったり、ピエロの扮装で紙飛行機の上で玉乗りしながらジャグリングをしたり。私も思わず拍手してしまった。
「お前は結局何がしたいのだ?」
「職種は特に拘らぬが、時給1200円以上が希望でござる」
「・・・いや、バイトの話ではない・・・まあいい。お前は本当に頑張ってるよ」
「うむ。拙者は実に良く頑張っておる」
「ただ、俺が望むような方向でないことが残念だ」
「そこは父上を見習ってござる」
「どういう意味?」
「父上も毎週頑張ってクチコミを書いておられるが、れもんちゃんが望むものとは、かけ離れてござる。毎回、何となく思い付いたことを書いているばかりでござる」
「そうか・・・まあいい。とりあえず、ピエロの衣装を脱いで、メイクを落としてこい」
そして、翌日、日曜日。れもんちゃんに会った。
やはり、れもんちゃんは素晴らしかった。人生において揺るがぬ真実は2つしかない。日本の夏はクソ暑いということと、れもんちゃんは宇宙一に宇宙一だということだ。
今回も沢山の感動を与えられた。
帰り際、れもんちゃんに尋ねた。
「れもんちゃん、今回のクチコミに希望があったら教えてほしいんだけど」
れもんちゃんは、少し首を傾げて、
「う~ん。シン太郎左衛門が色々な曲芸をするお話」と、それは可愛い笑顔を浮かべた。
「そんなのでいいの?」
「うん、それがいい」と、それはそれは可愛く言うのであった。
帰りの電車の中、シン太郎左衛門に告げた。
「れもんちゃんは素晴らしすぎる」
「それは分かりきったことでござる」
「『優しい、可愛い、美しい』だけでなく、実にモノの分かった女の子だ」
「それも1000年前から知ってござる」
「そうか。ただ、そうであっても、今一度胆に銘じておけ」
「うむ。畏まってござる」
永遠に揺るがぬ真実は、何度でも繰り返し訴えなければならない。
日本の夏は鬱陶しいぐらいクソ暑い。
そして、れもんちゃんは、信じがたいまでに宇宙一に宇宙一なのである。