福原ソープランド 神戸で人気の風俗店【クラブロイヤル】
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れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門、れもん星で缶バッジを買う様
ご利用日時:2023年11月26日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士を自称している。ただ、武士の基本用語、例えば月代という言葉を知らなかったりする。疑えばキリがない。
今朝、シン太郎左衛門の喚き散らす声で目を覚ました。「無礼者!」とか怒鳴っている。布団を捲って、「何の騒ぎだ」と言うと、シン太郎左衛門、はっと目を見開き、
「あっ、夢を見てござった」
「俺も夢を見ていた。お前の声に起こされた」
「拙者、れもん星に観光に行ってござった」
「俺もだ。お土産物屋で買い物をしている最中だった」
「拙者もでござる」
「それなら同じフライトに乗っていたに違いない。俺が見たれもん星の風景は関西国際空港にそっくりだった」
「拙者が着いたのは、港でござる。海が見え、小型のフェリーが停泊してござった」
「巨大な空母は泊まってなかった?」
「空母が入れるような港ではござらぬ。ごく小さな港でごさった。人影疎らな、哀愁が漂う景色、まるで『津軽海峡冬景色』でござった」
「それ、本当に、れもん星か?」
「れもん星に間違いござらぬ。閉まっておったが、『れもん星観光案内所』という看板を上げ、45度傾いた、崩れかけの建物がござった。その隣に鄙びた土産物屋が、店を開けてござった故、立ち寄ってみると、クラブロイヤルの入り口でいつも愛想よく出迎えてくれるスタッフさんとそっくりな人が『れもんちゃんグッズ、いかがですか』と声を掛けてきた」
「おお、それは入るしかないな」
「うむ。当然、入店してござる。すると、店内には陳列棚の一つもなく、ガシャポンが1台置いてあるばかり。『れもんちゃん缶バッジ』と手書きしてござる」
「それはステキだ。いいお土産になる」
「『1回千円』とあった故、店員殿に千円札を渡し、代わりに受け取ったコインでガシャポンを回し、カプセルを開けると・・・」
「うん」
「ただ一文字『も』と書かれた缶バッジが入ってござった」
「れもんちゃんの『も』だ」
「うむ。しかし、これでは、土産として頼りない故、もう一度千円払った。出てきたのは、またしても『も』。『れもん』でなく、『もも』になってしまった」
「悔しいな」
「いかにも悔しいので、また千円払うと、今度は『ん』が出た」
「近づいたな。次に『れ』が出れば、『れもん』が揃う」
「うむ。そう思って、また千円注ぎ込んだ。『が』の缶バッジが出てござる」
「並べたら、『ももんが』だ」
「うむ。いささか逆上して、今時珍しい二千円札でコインを2枚譲り受け、続けて2度回したら、『ず』と『き』が出た」
「『ももんがずき』になった」
「腹が立って、『無礼者!誰が、モモンガ好きだ!拙者、富士山シン太郎左衛門は生粋の絶対れもん主義者なるぞ!』と怒鳴った」
「なるほど、その夢はハズレだ」
「ハズレでござった」
「その缶バッジ、見てみたい」
「夢の中に忘れてきた」
「残念だ」
「うむ」
「それに比べると、俺の夢の方が、まだ良い」
「と言いますると」
「俺の夢の舞台は、関空のような場所だが、『歓迎 れもん星へようこそ』とカラフルな横断幕が掛かっていて、免税店のようなものが軒を連ねていた」
「華やかでよい」
「そうだ。人もたくさんだ。ふらっと散歩していると、一つのお土産物屋の前で、クラブロイヤルの入り口でいつも愛想よく出迎えてくれるスタッフさんとそっくりな人から『れもんちゃんグッズ、ありますよ』と声を掛けられた」
「拙者と同じでござる。同一人物に違いござらぬ」
「レモンイエローの法被を着てた」
「同じでござる」
「じゃあ、同じ人だ。明るい店内に入ると、なかなかの品揃えだ」
「ガシャポンは?」
「ガシャポンはなかった。れもんちゃんの等身大フィギュアがあって、非売品との札が掛かってた。本物には遠く及ばぬが、中々よく出来ていた。触ろうとして、怒られた」
「拙者の入った店とは、随分と違う」
「うん。ディスプレイもシャレてて、れもんちゃんのパネルが大小飾られている、とても居心地のよい空間だった」
「れもんちゃんがいる空間は居心地が良いに決まってござる」
「缶バッジもあった。それぞれ、れもんちゃんの全身写真、お顔のアップ、『れもんちゃん』とカラフルでポップな文字で記したもの等、5個セットで千円だった」
「・・・父上、拙者に喧嘩を売ってござるか」
「違う。あれこれ目移りしているうちに、『チームれもん』の黒いキャップに目が止まった。値札を見て、気を失いそうになったが、大奮発して買ってしまった」
「羨ましい限りでござる。その店は、関空にあるのでござるな」
「いや、そうは言ってない。関空にあれば、また行きたいが、そうではない」
「残念でござる」
「そのうち、店の奥の方にカーテンで閉ざされた入り口があるのに気付いた」
「それは、まさか・・・」
「うん。この奥、カーテンの向こうに、れもんちゃんが待っていると感じさせる雰囲気があった。少しドキドキしながら、『この奥、入っていい?』と訊くと、店員さんが『どうぞ、ご案内します』と快く答えてくれた」
「おおっ、それは期待が高まりまする。まさに、れもんちゃんとの御対面の場面そのままではござらぬか」
「そうだ。そして、クラブロイヤルのスタッフさんに似た店員さんが、お口のエチケットを軽く二度シュシュっとしてくれた後、カーテンを開けながら、にこやかに『カーテンの向こうに・・・』と言うので、勇んで一歩踏み出したら、カーテンの向こうには、まさに今カーテンを開けてくれたスタッフさんが満面の笑顔で立っていた」
「・・・スタッフさんの瞬間移動芸でござるな」
「そうだ。見事なテレポーテーションだった・・・でも、こういうものが見たかった訳ではないので、心底ガッカリした。ただ、お義理で拍手はした。その場面で、お前の怒鳴り声に起こされた」
「父上の夢もハズレでござる」
「そうだ。お前は6等、俺は5等だ」
「いい年をして、残念な夢の話で盛り上がっているとは、我々親子は救いようのない愚か者でござるな」
「そのとおりだ。しかし、実物のれもんちゃんにハズレや残念はない。いつも数万発の花火が打ち上がるような大当たりだ」
「いかにも。そして、今日は、れもんちゃんに会う日でござる」
二人揃って、ヘヘヘヘと、だらしなく笑った。
れもんちゃんは、今日もやっぱり宇宙一だった。この冬空に、百万発の花火が上がった。
シン太郎左衛門、れもん星で缶バッジを買う様ありがとうございました。
ひかり【VIP】(19)
投稿者:たまのじょう様
ご利用日時:2023年11月23日
久しぶりの福原、ひかりさんで楽しい時間をすごせました。
気持ちよくしてくれてさらに会話もとても楽しかったです。
また必ず指名します。
ひかりさんで最高!
たまのじょう様ありがとうございました。
りんか【VIP】(22)
投稿者:ナカガワ様
ご利用日時:2023年11月20日
女優の美村里江に似た美人さんです
濃厚なキスから始まるエロい女性です。
また、絶対に会いに行きます!
ナカガワ様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門とバーチャル動物園様
ご利用日時:2023年11月19日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。ただ、チョンマゲを結った経験はないし、先端恐怖症なので刀は嫌いだと言う。割りと動物好きな、絶対れもん主義者である。
先週某日、自宅での夕食後、シン太郎左衛門が、明日、有給休暇を取り、動物園に連れて行け、と言い出した。前話で触れた三姉妹から動物園も楽しいと聞かされたらしい。
「先日の水族館、無念でござった。ズボンの中に閉じ込められたまま、結局イワシ一匹見れずに終わった。動物園では、そうはいかん。江戸の仇は長崎で討つ」とか息巻いている。
「どこに行こうが、人目があるところで、お前を外には出せん。警察に通報されてしまう。それに寒い」
「心配ご無用。拙者、目ばかり頭巾を被りまする」
「目ばかり頭巾?現代風に言えば、フルフェイスマスクだ。不審者だ。警察が来たとき、いよいよ言い逃れが出来なくなる」
「何と言われようと、拙者、意地でも動物園に行きまする」
「ダメだ。お前、最近、ズボンのチャックを内側から開けることを覚えたし、危険極まりない」
二人は、散々「絶対行く」「絶対ダメ」の押し問答を繰り返し、延々と不毛な時間を過ごした。結局、動物園に足を運ぶことはしないが、今日これから動物図鑑を見ながら、適宜、動画サイトのコンテンツで鳴き声や動きの情報を補い、動物園に行った気になるということで双方の妥協点を見い出した。
「致し方ない。しかし、くれぐれも臨場感を損なわぬよう、お気遣い願いたい。実際に動物園に行った感じが大事でござる」
「分かった。動物園はかなり異臭が漂う場所だ。もし、臭いにも拘りたいなら、隣の家からラッピーのウンコを貰ってきてやる」
「それは要らぬ」
食器を片付けると、ダイニングテーブルに、何十年も前に買った動物図鑑とスマホを並べ、
「それじゃ始める」
「うむ」
「家を出るところからやる?」
「『実際に動物園に行った感じが大事』とは言ったが、そこまでのリアリティーは求めておらぬ」
「そうか。片道2時間は掛かるしな。よし。では、動物園に着いたところから始めよう」
「そうしてくだされ」
「では入園券を買おう・・・と思ったら、財布を家に忘れてきた」
「・・・父上、余計な部分は飛ばしてくだされ。動物だけでよい」
「愛想がないヤツだ。まあいい。それでは最初は象だ」
図鑑を捲って、象の絵を見せてやった。
「これは、アフリカ象だ。大きいなぁ。鳴き声は『パオ~ン』だ」
「知ってござる。父上のパンツで、嫌になるほど見てきた。次に行ってくだされ」
「早くも満足したか。よし、では続いて、ワニだ。ウニではないぞ。鳴き声は・・・調べようか?」
「ワニは鳴かぬ。次に行ってくだされ」
「よし。では、カバだ。見た目以上に狂暴だ。鳴き声は知らん。動画を見るか?」
「要らぬ」
「おい、シン太郎左衛門、もっと楽しそうにしろ」
「ちっとも楽しくないのだから、どうしようもござらぬ」
「俺だって、こんなこと、楽しくてやってる訳じゃないぞ。頑張って盛り上げてやってるのに、呆れたヤツだ。実際に動物園に行かなくって、ホントによかった。寒い中、わざわざ出掛けて、危ない橋を渡って動物を見せてやってるのに、こんなリアクションが続いたら、完全にぶちギレてる」
「拙者が見たいのは、かようなモノではござらぬ」
「何が見たいのだ?」
「れもんちゃんに似た動物さんでござる」
「だったら最初に言え!少なくとも、ワニやカバを見せる手間は省けた」
「うむ」
「反省しろ」
「反省しない。拙者は絶対れもん主義者でござる。れもんちゃんと関係ないものに興味はござらぬ」
「よく言った。俺もそうだ」
二人は固い握手を交わした。
「それじゃ、二人で、れもんちゃんっぽい動物を捜そう」
「うむ」
「では・・・キリンは?目がクリクリっとしてる・・・ほれ。どうだ?」
シン太郎左衛門、図鑑をマジマジと眺めた後、「確かに、れもんちゃんに似て、クリクリお目々ではござるが、コヤツ、首の長さが尋常でない」
「それはそうだ。れもんちゃんの首は別に長くない。言わば普通だ。れもんちゃんが、こんな首をしてたら・・・『キリンれもん』だ」
「なんですと!それは、どういう意味でござるか・・・」
「いや、特に意味はない。一種のオヤジギャグだ」
「なんと!これが、オヤジギャグとな」
「うん、その積もりで言った」
「今一度言われよ」
「・・・キリンれもん・・・ダメ?」
「父上は、オヤジギャグの基本が出来ておらぬ。オヤジとして長の年月重ねながら、この体たらく。恥ずべき醜態でこざる」
「そんなに酷かったかなぁ」
「父上、オヤジギャグは、れもん道の基本中の基本でござる。かような失態、れもんちゃんに知られれば、『こんな人だと思わなかったよ~ん』と即刻破門でござる」
「う~ん、では御内聞に願おう。ただ、次に進む前に、念のために一言。れもんちゃんは、のべつ幕無しに『よ~ん』と言う訳ではない。むしろ、普通に話しているときには、基本的に『よ~ん』とは言わない」
「うむ、それは父上のクチコミでは珍しい、貴重な情報でござる。では、次の動物に参りましょうぞ」
「よし、それでは・・・クジャクはどうだ?豪華絢爛だろ」
「なるほど、れもんちゃんはゴージャスでござる」
「まあ、こいつは雄だけどな。クジャクは雄だけがゴージャスなのだ」
「れもんちゃんを雄と比べて、なんとする」
「だな。では・・・そうだな・・・これは?」
「おっ、これは鹿でござる」
「そうだよ」
作画の出来映えによるところが大ではあったが、鹿の家族、中でも仔鹿がとても可愛かった。
「うむ。これは・・・へへへ・・・れもんちゃんに似てる」
「目がクリクリだ」
「クリクリお目々が、れもんちゃんでござる」
「しなやかなボディラインだ」
「スラッとした、しなやかな身体の線がれもんちゃんでござる」
「ヒップラインが艶かしい」
「仔鹿のお尻、れもんちゃんのお尻に似てる・・・へへへ」
「おい、図鑑に頬擦りするな!」
「これはよい。父上、やはり明日は動物園に参りましょうぞ」
「鹿だけ見るなら、動物園に行かんでもいい。奈良公園に行ったら、鹿がいっぱいだ」
「それは誠にござるか・・・行きたい」
「ダメだ。動物園に行かない約束で、図鑑を見せたのだ」
そこから、またしても「絶対行く」「絶対ダメ」の押し問答が再燃した。
結局、来年の夏前、生まれたての仔鹿たちが公開される季節に奈良公園を訪れることを約束させられてしまった。
その晩、パジャマに着替えて、布団に入るなり、シン太郎左衛門は、「今日も大変よい1日でごさった。それもこれも、れもんちゃんのお蔭でござる」と言った後、「奈良公園・・・へへへ・・・れもんちゃんが、いっぱい」と、だらしなく笑った。
そして、今日、れもんちゃんに会ってきた。仔鹿に似ているかどうかは、さておいて、れもんちゃんは、やはり宇宙一であった。
シン太郎左衛門は間違えている。れもんちゃんは、唯一無二だから、奈良公園に行っても、いっぱいいる訳がないのである。
シン太郎左衛門とバーチャル動物園様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門の『絶対れもん主義宣言』様
ご利用日時:2023年11月12日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士だが、将来の夢はラッパーだと言うし、チョンマゲもしてないし、かなり出鱈目なヤツだと思われる。
さて、家の固定電話が鳴っても取らぬ主義だが、先週の某日、その日に限って魔が差して、うっかり出てしまった。その結果、親戚の子供を1日預かることになった。
電話を切った後、不満を誰かに聞いてほしくて、シン太郎左衛門に「明日は有給休暇を取って子守りをすることになってしまった。小学校の六年、五年、二年の三姉妹だ」と言うと、
「うむ、ご苦労」
と、上から目線の、偉そうな返事をするので、ムッとしたが、とりあえず説明を続けた。
「一番上の子には赤ん坊のときに会ったことがあるが、実質的には全員初対面だ。大変に面倒くさい」
「断ればよいものを」
「もう手遅れだ。承諾してしまった。水族館を見学させた後、観覧車に乗せてやることになっている」
「それは楽しそうでござる。拙者も行く」と、シン太郎左衛門、急に目を輝かせた。
「言っておくが、エロい要素は一つもない。三姉妹は小学生だから、変な目で見てはいかん」
シン太郎左衛門は「拙者、ロリコンではござらぬ」と憤然と言い返してきた。
「俺も違う」
「拙者、れもん派でござる」
「俺もだ」
二人は、がっちりと握手を交わした。
「拙者、れもん派の中でも、特に絶対れもん主義を奉じるものでござる」
「俺もだ」
二人は、再びがっちりと握手を交わした。
「拙者、当今、新曲を製作中でござる。題して『絶対れもん主義宣言 様』、またしても名曲でござる」
「いや、お前は名曲を産み出したことは一度もないし、そのタイトルを聞いただけで、不安で一杯になった。まず、普通は、タイトルに様は付けない」
「では、なぜ父上はいつもクチコミの題に様を付けておられまするか」
「勝手に付いてしまうのだ」
「外せない?」
「やり方が分からん」
翌日の昼前、親戚の子供たちはやってきた。呆れるほど人懐っこい子たちだった。人懐っこいのは一般には美徳なのだろうが、私は人見知りなので、お互い自己紹介も済まぬうちにいきなりグイグイ来られると、ガードが固くなってしまう。母親の車で送り届けられ、我が家に入るなり、三姉妹は「おじさん、早く水族館に行こう」「その前にジュースがほしい」「おじさんのウチは、ジュゴン、飼ってるの?」「ジュゴンは無理だよ。でも、ラッコなら飼えるよね?」「わぁ~、ラッコ見たい」「タガメやゲンゴロウ虫も、おウチで飼えるよ」「わたし、アタマ虫、嫌い」とか、代わる代わる、切れ間なくピチピチと喋ってくる。一瞬「おじさんの家には、ラッコもタガメもアタマ虫もいないが、シンタロウ虫ならいるよ」と言おうかと考えたが、彼女たちは、すでに別の話題に移っていた。私のように考えて話していては、彼女たちの会話のリズムに付いていけないことを悟り、今日は1日黙って過ごすことに決めた。
水族館に向かう道中も、ずっと三姉妹は喋り倒し、水族館の中でもハシャギ回していた。フードコートでも喋り続けていた。無邪気で微笑ましかったし、一緒にいて気持ちが和まないでもなかったが、これだけ喋り続けられると、適当に相槌を打って、生返事をするだけなのに、疲労が蓄積していった。
夕暮れが迫ってくると、急いで観覧車に乗って、さっさと家に帰りたくなった。チケット売り場から乗り場までも三姉妹は、やはり喋りまくっている。「観覧車、楽しみ。おじさん、海は見える?」と訊かれた後、「もちろん見えるさ」と答えるまでの間に、「南極、見える?」「ペンギン、いっぱい見える?」と追加の質問が割り込んできて、結果、私は「大阪にある観覧車から南極のペンギンが見えるか」という問いに「もちろん見えるさ」と答える無責任な大人になっていた。順番が来ると、私は三姉妹を押し込むようにワゴンに乗せ、係員に同乗するように言われても、「嫌だ!俺は次のに乗るんだ!」とゴネまくり、強引に我を通した。彼女たちと観覧車の狭い密室に入れられて、正気のまま出て来れる自信がなかった。
後続のワゴンに乗り、一人で座席に腰を下ろすと、ホッと息を吐いた。シン太郎左衛門が楽しそうに、
「本当に賑やかな娘さんたちでござる」
「これは、たまらん。俺は静穏な環境でなければ生きていけない虚弱な生き物なのだ」
「いや。可愛いものでござる。きっと、れもんちゃんも、こんな元気なお子でござったに違いない」
疲れ果てて、窓の外の景色を見る気にもならなかった。
「当然、れもんちゃんは、子供の頃、元気で可愛いかっただろう。ただ、それはそれ、これはこれだ」
「うむ。可愛く、元気なだけでなく、美しく、楽しく、エロく、そして大人の落ち着きも兼ね備えていなければ、れもんちゃんのような宇宙一にはなれぬ」
「そのとおりだ。ただ、それは小学生に求めるべきことではない」
「うむ。ところで、れもんちゃんは、今週、女の子休みでござる。今日あたり美容院に行ったに違いござらぬ」
「そうかなぁ。写メ日記には、そんな記事はなかったけどなぁ」
「ん?写メ日記とは、何でござるか」
余計なことを口走ってしまったことに気付いた。シン太郎左衛門には、れもんちゃんの写メ日記のことをぼやかして伝えていた。真実を知ったとき、見せろ、見せろと5分毎にせっつかれるのは目に見えていた。
「気にするな。独り言だ」
「うむ。そう言えば、昨日お話した『絶対れもん主義宣言』、完成してござる。早速歌いまする」
押し売りめいていたが、要らないと言うと、話が写メ日記に戻って来そうな気がしたから、「そうか。歌ってみろ」と言った。
「では、心してお聴きくだされ」
「絶対れもん主義宣言」は、ショボいリズムボックス風のイントロで始まった。歌詞は大体次のような感じだった。
ビッ! ビッ、ビッ、ビッ!! ×4
美容院に行ったよ~ん
宇宙空母で行ったよ~ん
ミサイル、レーザー撃ちまくり
流星ドッサリ潰したよ~ん
髪をチョキチョキ切ったよ~ん
太陽系を後にして、すぐ
宇宙海賊、攻めてきた(いやん)
迎撃ミサイル発射だよ~ん
トリートメント、完璧だよ~ん
海賊船が逃げてくよ~ん
レーザービームで追い回し
惑星もろとも爆破だよ~ん
れもんちゃんは優しい子
悪い奴らは許さない
れもんちゃんは楽しい子
髪の毛サラサラ、いい匂い
我ら、シン太郎左衛門ズ ×2
ワンコーラス聞き終えたところで一旦止めた。
「何番まであるの?」
「3番までござる」
「今日は、とりあえず、ここまででいいや」
シン太郎左衛門は不満げだったが、三姉妹と甲乙つけがたいほど、聞いてて疲れる代物だった。
「曲調が、まるで昔のテクノポップみたいだ。ラップには聞こえない」
「それは、拙者には、どうでもいいことでござる」
「お前、ラッパーになるんじゃないのかよ」
「拙者は絶対れもん主義者でござる。目的に達するための手段は選ばぬ。ラップだろうが、音頭だろうが、れもん道を邁進するのみ」
「そう言うわりには、お前の曲、最近、雑くないか?ドラム演奏も手抜きっぽい」
「なんの。今回の曲で、出だしの『ビッ』は、れもんちゃんの『美』を語ってござる。その『ビッ』は4個で1セットで、計4セットある。4は『よ~ん』と通じてござる。大変に凝っている」
聞いてるうちに、何だか面倒くさくなってしまい、
「そうか、それは気付かなかった。隅々まで配慮が及んでるな。とにかく美がいっぱいだ」
「うむ。れもんちゃんは、美に満ち溢れてござる」
「それは、そうだ。ホントに唯一無二の素晴らしい女の子だ」
「うむ。では、二番を」
「いや、それは勘弁してほしい」
そう言ったとき、ふと窓の外に目が行った。
「いや、聴いてもらおう」と言って、シン太郎左衛門が、またリズムボックスを鳴らすのを制して、「見ろ」と窓の外を指差した。
ズボンのチャックを内側から開き、頭をもたげたシン太郎左衛門は、私の指の先に目をやり、
「あっ、宇宙空母!!れもんちゃんでござる!!」
夕焼けをバックに、れもんちゃんの空飛ぶ空母は、その巨大すぎるシルエットを大阪湾上空でゆっくりと移動させていた。
「大きいな~。この前よりも、更に一回り大きくなった気が致しまする。れもんちゃんは成長著しい。きっと美容院からの御帰還でござるな」
「いや、今回は単に散歩かもしれん。いずれにしても、敬礼しよう」
二人はビシッと敬礼を決めた。
「実に美しいものでござる。れもんちゃんに属するものは、すべて美しい」
二人は感動の余り、半ば呆然と宇宙空母を見詰め続けた。
帰りの電車に乗ると、私は三姉妹の母親のLINEに、自宅の最寄り駅への到着予定時刻を送った。乗り換えが2回あったが、乗車時間が最も長い電車で幸いにも座ることができた。座った途端に睡魔に襲われたが、隣で三姉妹がずっとペチャクチャ喋って、ゲタゲタ笑っていたので、完全に眠りに落ちることはなく、半醒半睡で過ごした。
私の自宅の最寄り駅に着き、改札から出るとき、三姉妹の上の子が、「おじさんって、いっこく堂みたいだね」と言った。まだ頭が半分眠っている感じで、(「いっこく堂」ってラーメン屋だっけ?)と思うばかりで、意味が理解できなかった。
駅前のロータリーには三姉妹の母親の車が停まっていた。「さあ、お母さんが待ってるよ」と言うと、それまでハシャギ続けていた三姉妹は黙ってしまった。そして、一番下の子が私の腰に抱き付いて、泣き出した。
「一緒に行こう、DJ左衛門。一緒に行こう」
さっきの「いっこく堂」の意味が朧気ながら分かってきた。
三姉妹を宥めすかして、車に乗せた。「また、来ていい?」と訊かれたから、「いいよ」と答えた。車が出発すると、三姉妹は手を振りながら、しばらく「DJ左衛門、バイバイ」「おじさん、バイバイ」と連呼していたが、信号が青になり車が国道に合流するときには、車中から「ビッ!ビッ、ビッ、ビッ!!」という歌声が微かに聞こえてきた。
「シン太郎左衛門、お前、帰りの電車であの子らと話したな」
「うむ。楽しかった」
「俺は腹話術使いだと思われている」
「うむ。腹話術、これを機に学ばれよ」
「いやだ。その上、歌まで教えたな」
「うむ。子供は覚えが速い。すぐに歌えるようになってござる。可愛いものでござる」
「うん・・・結局なんやかんやで楽しかった」
「うむ。それもこれも、れもんちゃんのお蔭でござる」
「よく分からんが、多分そうだ」
家に向かって歩き出したが、急に静かになったのが妙に寂しかった。
「寒くなった」
「うむ」
「三姉妹は今まさに『絶対れもん主義宣言』を合唱しているだろう。手遅れかもしれんが、一応訊いておく。結構重要な話だ。『絶対れもん主義宣言』の2番と3番に、『丸いお尻にTバック』とか、オッパイがどうとかって歌詞、入ってないよな?」
シン太郎左衛門は、しばらく考えた後、「『それは言えない。ヒミツだもん』」
そして、今日、れもんちゃんに会ってきた。当然、宇宙一だった。
なお、あの日以来、「ビッ!ビッ、ビッ、ビッ!!」が耳から離れなくて困っている。
シン太郎左衛門の『絶対れもん主義宣言』様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(あるいは、DJ左衛門)様
ご利用日時:2023年11月5日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。剣術について何流を修めたとか、そんな話は聞いたこともないが、歌を歌うのが好きである。
前にも書いたが、私は当たり前の勤め人だから、朝は早起きして電車に乗る。通勤電車は、かなり混んでいて、大概は吊革に掴まり、窓の外の景色を見て過ごす。
先週の某日、そんな朝の通勤電車の中で、シン太郎左衛門がいきなり『れもんちゃん音頭』の1番を歌い出した。そんなことは初めてだったから、シン太郎左衛門が何をするつもりなのか、少し不安も感じたが、黙って観察することにした。
はぁ~、広い世界にただ一輪
可憐に咲いたレモン花
甘い香りに誘われて・・・
最初は、鼻唄を口ずさむ程度の軽い感じだったが、段々と声に力がみなぎっていく。シン太郎左衛門の声は、周囲の乗客に届くものではないから、私の目に映っているのは、いつも通りの通勤電車の車内で、私の両隣、前の座席ともに、いつものメンツには特に変わった様子もなかった。そんな風景に一頻り朗々としたシン太郎左衛門の歌声が響き渡り、相当の熱唱となって終わった。
その後、しばしの沈黙があり、これで終わりか?なんか拍子抜けだ、と思っていると、また『れもんちゃん音頭』の1番が始まった。今回は、歌い出しから大熱唱だった。こぶしの効いた粘着質の唱法に、もっと爽やかに歌えばいいのに、と思ったが、
・・・
優しい、可愛い、美しい
宇宙で一番れもんちゃん
曲の終わりには、私は不覚にも胸も目頭も熱くなっていた。シン太郎左衛門は、見事に『れもんちゃん音頭』を声の限り歌い上げた。まるでフランク・シナトラの『マイウェイ』のようで、これを聴いたら、どんな朴念仁でも、れもんちゃんが宇宙で一番だと納得せざるを得まい、そう心底思えるほど感動的な歌いっぷりだった。シン太郎左衛門は満足げに額の汗を拭った。
(まだ続きがあるのか?シン太郎左衛門は、何がしたいんだろうか)と思っていたら、今度は、
ツンツン、トントン
ツンツン、トン・・・
と、モールス信号のような、ショボいリズムボックス風のイントロに続いて、
男と生まれて短い一生
終わるとなったらニッコリ合掌
挽肉丸めて平たく伸ばす・・・
と、ラップが始まった。
(これ、聞き覚えがある・・・そうだ、これは、『れもんちゃん音頭』の幻の27番だ)などと考えているうちに、出だしはパワフルだったシン太郎左衛門の声から徐々に力が抜けていくのが感じ取れた。
何が起こったのか分からないが、シン太郎左衛門は歌い終わると、目に見えて疲れた様子で、フッと溜め息を吐いて、ヘニャヘニャっと、力なく項垂れてしまった。
そして、それっきり終日黙ったままだった。
(一体、何が起こったんだろう?こいつ、結局何がしたかったんだろう?)という疑問が頭に浮かんだが、この件、すっかり忘れて1日を過ごし、帰宅後、風呂の湯船にゆっくり浸かっているときに思い出した。
お湯にプカプカ浮かんだ、お気に入りのアヒルのオモチャで遊んでいるシン太郎左衛門に、「今朝、電車の中で『れもんちゃん音頭』を歌ってたよな」と訊いてみた。
「うむ。歌いましてござる。大変、楽しかった」
「2回、歌ったよな」
「うむ。初めは、暇で暇で、頭がボーっとしているうちに、思わず歌い出してしまったのでござる。すると、周りの御仁たちから『おお、達者なものでござるなぁ』『よい声をしてござる』などと声が上がりましてござる」
「そんなことになってたんだ。どういう仕組みかは知らんが、俺には他の武士の声が聞こえないのだ。それに他の武士と話しているお前の声も聞こえない」
「そのようでござるな。同じ車両に乗り合わせた武士の面々の熱い声援に後押しされて、拙者、『れもんちゃん音頭』の第一番、力一杯歌い申した」
「うん。熱唱だった」
「歌い終わると、やんやの喝采。絶賛の嵐でござった。いやはや、れもんちゃん人気は大変なものでござる」
「そうなるか?今の話からは、とりあえず『れもんちゃん音頭』が大反響だったということにしかならんだろ?」
「そうではござらぬ。皆々、れもんちゃんをご存じでござった。『これは、かの有名な、クラブロイヤルのれもん姫の歌でござるな』『れもん姫と言えば、世にも名高き美人でござる』『予約が困難でござる故、拙者、まだ会ておらぬ』『拙者はお会いいたした。この世のものとは思えぬ優れもの。まさしく宇宙一でござった』等、口々にれもんちゃんを褒めそやし、想いを語ってござった」
「そうだったんだ・・・あの電車の男性客は、みんな遊び好きだったのか・・・全然、気が付かなかった。れもんちゃんに会ったことがあるにせよ、ないにせよ、れもんちゃんのファンが集っていたとは。そうと聞かされると、何となく気まずい。明日から一本早い電車に乗ろう」
「電車を替えても違いはござらぬ。武士は、みんな、揃いも揃って、れもん好きでござる」
「多分そうなんだろう。れもんちゃんが、今年『ミスヘブン総選挙』に出ない理由が分かった。そこまで知名度も名声もあれば、確かに出る意味はない」
「うむ」
「そうか・・・そんなことが起こってたんだ」
「うむ。それはそれは大変な盛り上がりでござった。皆々『れもんちゃん音頭』の余韻に酔いしれて、『今一度、歌ってくだされ』という声が一斉に起こったのでござる」
「それで、アンコールに応えて、あの大熱唱だったわけだ」
「うむ。車中は興奮の坩堝と化し、最後の『優しい、可愛い、美しい、宇宙で一番れもんちゃん』は、100人を越える武士たちの大合唱でござった」
「ふ~ん・・・思い浮かべてみると、なんとも言えん光景だな。ちょっとおぞましくもある」
「曲が終わっても、皆々、異様なほどに気持ちが昂っておられた故、余勢を駆って、ラップを歌ったら、全く受けなかった」
「・・・調子に乗ったら、そんなもんだよ」
「歌い終わったときの沈黙たるや、大音量で『シ~ン』としてござった。余りの気まずさに、一か八か『拙者、シ~ン太郎でござる』とギャグを言ってみたが、失笑一つ起こらなかった」
「・・・お前、勇気あるな」
「うむ。拙者は勇気の塊でござる」
「ラップが受けず、ギャグが滑って、多少は落ち込んだんじゃないか?」
「そういうことはござらぬ。朝から全力で歌ったから、少し疲れたばかり。同じ想いを持つ、れもんちゃんファンの武士たちと過ごす時間は実に楽しかった」
そう言いながら、シン太郎左衛門はアヒルの背中を押して、ピーと甲高い鳴き声をあげさせた。
「ところで、お前、そのアヒルのオモチャが好きだよな。それ、何が面白いわけ?」
「このアヒルは」と、シン太郎左衛門はゴムのアヒルを湯の中にグッと沈め、「こうやって湯船の底まで沈めて放すと、浮力で宙まで飛び上がるかと思いきや」と手を放すと、「こうして、ポコッと水面に浮かぶだけでござる。何度やっても飛びませぬ・・・面白い」
「なるほど・・・れもんちゃんとは違う意味だが、お前もかなり不思議だな」
「うむ。拙者の将来の夢は、ラッパーになることでござる」
今回、本来書く予定だった内容に到達する前に、前置きが膨らみ過ぎてしまった。ここで一旦筆を擱くことにする。
ところで、今日も、れもんちゃんに会った。当然ながら宇宙一だった。
シン太郎左衛門(あるいは、DJ左衛門)様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(あるいは妖精ランジェリー)様
ご利用日時:2023年10月29日
我が馬鹿息子シン太郎左衛門は武士である。疑えばキリがないので、信じることにしている。
昨日の昼休み、職場の近くのラーメン屋で食券販売機の下に釣り銭を落としてしまって、しゃがんだ拍子にトランクスが股の部分で音を立てて裂けてしまった。
シン太郎左衛門が「父上、ビリっといきましたな」
「大丈夫だ。被害はズボンまで及んでいない。パンツだけだ。随分と履き古したからな。いわゆる寿命というヤツだ」
「とは言え、拙者、早速すきま風に晒されてござる」
「武士のくせに、すきま風ごときで泣き言を言うな」
カウンターに座って、店員に食券を渡した。
「父上は、この象さんのパンツがお気に入りでござったな。週に2、3回は履いておられた」
「気に入っていた訳ではない。偶々そうなったのだ。確か5年前、ショッピングモールの衣料品コーナーで買ったのだ。象さんは『このワゴンの商品、どれでも3点で500円』とは思えない精勤ぶりだった」
「寂しくなりまする」
「大丈夫。まだキリンもペンギンとライオンもいる。ラッコもアシカもカバもいる。シマウマもいる」
「父上のパンツは、実に揃いも揃って動物が描かれてござる」
「あのとき、いくらあっても困るものでないと、動物のプリント柄のパンツをワゴンごと買い占めてしまったからな。こんなに丈夫だとは思いもよらず、一生分どころか人生3回分の動物パンツを買ってしまった。そいつらが押し入れで大きな段ボール箱に山盛りになって出番を待ってるのを見ると、気分が悪くなる。象さんだけでもまだ10頭はいる。みんな、丈夫で長持ちの優れモノだが、デザインが雑すぎて、まじまじ見てるとイライラしてくるのが珠に傷だ」
「父上は基本的にマヌケでござる」
「そのとおりだ」
ラーメンが出てきたので、胡椒を振った。
「父上は、着るものに頓着がなさすぎでござる」
「それは少し違う。着ている自分に興味がないだけだ。モノの良し悪しは大体分かる。れもんちゃんの着ているモノは、しっかり賞翫している」
シン太郎左衛門は、へへへへとだらしなく笑い出し、「『れもんちゃん』と聞くと、身体がポカポカして、すきま風の冷たさを忘れまする」
「れもんちゃんは、冬の日のお日様のような有難いお方だ」
「うむ。それに、れもんちゃんのパンツは可愛い」
「ブラジャーも可愛い」
「いや、拙者は断然パンツ派でござる」
「そういう派閥的な発想を持ち込むべきではない。パンツとブラジャーは一致団結して、れもんちゃんの魅力を引き立てているのだ」
「うむ。れもんちゃんの身体は、それは美しいものでござる」
「そうだ。だから、下着たちにも引き立て甲斐があるというものだ。れもんちゃんの下着は、有名メーカーの高級ブランドだぞ」
「なんと。それって、お高いんじゃない?」
「・・・なんだ、その武士らしくない物言いは?いつもの『マジで?』よりも悪質だぞ」
「では、もとい。さぞ値の張るものでござろう」
「当然だ。我が家の動物パンツが束になって掛かっても、れもんちゃんのブラジャー1つに敵わぬのだ。比較するのも畏れ多い」
「なるほど、れもんちゃんは、そんな高級な下着を数多所持しておられるのでござるな」
「そうだ。毎回違うのを身に着けている。新作が出るたびに買い揃えていると思われる。ドッサリと買うんだろう」
「ドッサリとは、どれくらいでござるか」
「ショップに入って、ほぼ店ごと買う」
「店ごとでござるか。それは大変な荷物になりましょうぞ。まさか、れもんちゃんが背負って帰るとも思われませぬ」
「当たり前だ。れもんちゃんは、会計が済んだパンティやブラジャーを魔法の杖で叩いていくのだ。そうすると、羽が生えて、蝶々や小鳥のようにパタパタと飛び立って、店の外に出ていく。三ノ宮の街の上に広がる青空に、羽の生えた、色とりどりのパンティやブラジャーが大群となって飛んでいる」
「美しい景気でござる」
「そして、その向かう先は・・・」
「その向かう先は?」
「例の空飛ぶ空母だ」
「おお、れもんちゃんの自家用車。先日のアレでござるな」
「そう。あの空飛ぶ空母の中に吸い込まれるように消えていく」
「・・・見てきたような嘘でござるな」
「いや、目撃者も多数いる正真正銘の真実だ。ただ、全員その直後に記憶を消されてしまった」
「うむ。それであれば真実でござろう。ただ誰が彼等の記憶を消したかは謎として残りまするな」
「当然れもんちゃんだ」
「れもんちゃん、恐るべしでござる」
「うむ。それはそうと、空母の中には巨大なウォークイン・クローゼットがあって、パンティとブラジャーは、その体育館のように広い空間で楽しく飛び回って暮らすのだ」
「なるほど」
「そして、出勤前になると、れもんちゃんは、伸縮自在の長い柄を持つ虫取網を持って、そのウォークイン・クローゼットに入る。その日の予約の数に合わせて、またお客の好みを考えて、キャッキャと、はしゃぎながら、飛んでるパンティとブラジャーを追い掛け回し、ペアで捕獲して優しくバッグにしまうのだ。こういう感じだから、れもんちゃんの下着はとても活きがよい」
「ぶっ飛んだ話でござる。さすがに誰も信じますまい」
「イメージだ。信じなくていい。感じるんだ」
シン太郎左衛門は、大きく頷き、「うむ。確かに、れもんちゃんにピッタリの話でござる。そして、れもんちゃんには、可愛い秘密が一杯でござる」
「そうだ。よし、では、行こう・・・おネエさん、お愛想」
「父上、ここは食券による前払い制でござる」
「そうだ。忘れていた。毎回、これをやってしまう」
「父上は、根っ子の部分でマヌケでござる」
店を出て、職場への帰り道、シン太郎左衛門が性懲りもなくラップを始めた。
Yo, yo, yo, yo, yo, yo, yo, yo
ラーメン食べたら、パンツが破けて、
股間に木枯し吹き荒れる。でも、
丸いお尻にTバック、へへ、真ん丸お尻にTバック、へへ
れもんちゃんたら Yo, say パンツ、れもんちゃんたら Yo, say ブラジャー
アカギレ、シモヤケ、なんでも治るぜ
凍れる冬に欠かせない yo
ラブリー・フェアリーれもんちゃん
全く意味不明に思えたが、風は股間を中央に冷たくとも、見上げた空が青かったから、スルーした。
そして、今日れもんちゃんに会った。
れもんちゃんは、当然凄すぎたし、れもんちゃんの下着には、やっぱり可愛い羽が生えていた。
シン太郎左衛門(あるいは妖精ランジェリー)様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門と沈黙の武士たち様
ご利用日時:2023年10月22日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は自らを武士だと言う。別に武士でも武士でなくても、結局は大した問題ではない。
先々週の日曜日、左の乳首に触れられると妙に気持ちよかったので、れもんちゃんにそう言ったら、「チクビ左衛門だね」と笑われた。
先週の日曜日は、左右どちらの乳首も触れられると妙に気持ちよかったので、れもんちゃんにそう言ったら、また「チクビ左衛門だね」と笑われた。
今日もまた日曜日。れもんちゃんに会う日の朝は、私もシン太郎左衛門も気持ちがハイになっているので、何をやっても大抵とても盛り上がる。ただ、盛り上がらないことも稀にある。
朝食を済ませた後、出発までまだかなり時間があったので、「昨日、押し入れを掃除していて、ポータブルの将棋セットを見付けた。シン太郎左衛門、お前、将棋は指せるか?」
「指せまする」
「では、やろう」
「実は、拙者、かなりの腕前でござる」と、妙に見下すような態度を見せるので、駒を並べながら、「何をおっしゃるウサギさん、だ。捻り潰してやる。さあ、かかって来い」
大して指し進めるまでもなく分かった、シン太郎左衛門は「マジもの」だった。
「シン太郎左衛門、止めよう。お前が藤井八冠に見えてきた」
「うむ。拙者、藤井聡太の棋譜は全て記憶してござる」
「完全に相手を間違えた」
「藤井聡太に勝てるのは、れもんちゃんだけでござる」
「将棋で?」
「流石にそれはない。拙者の『人間キラキラ・ランキング2023』の話でござる。れもんちゃんが、断トツ1位。その後、9位までは空位で、10位で藤井聡太と井上尚弥が並んでござる」
「なるほど、妥当な線だな」
「キラキラ・ランキングは、その後もず~っと続いて、何番とは言わぬが、父上も出てくる。岸田首相と競い合ってこざる」
「ノー・コメント。その話は止めておこう」
ポータブル将棋セットは、ゴミ箱に放り込んだ。
「話はガラッと変わるが、先週、先々週と続けて、『乳首に触られると気持ちいい』と俺が言うと、れもんちゃんが『チクビ左衛門だね』と応じたことを覚えているか?」
シン太郎左衛門は首を傾げた。
「覚えているだろ?」
「覚えてない」
「説明が手間だから、覚えていることにしてくれ」
「あっ、思い出してござる」
「うむ。それでよい」
「いや、脅しに屈したのではござらぬ。本当に突然思い出したのでござる。れもんちゃん、いきなり何を言い出すのかと訝しく感じたが、れもんちゃんは、ちょくちょく突拍子もないことを言い出しまするゆえ、恐らくそういったことかと合点してござった」
「うん。俺もそんな印象を持った。でも、本当にそうなのか?」
「と言いますると・・・」
「つまり・・・この部屋には、俺とお前以外にも誰かがいるのではないか?」
「ほほう、季節外れの怪談でござるな」
「違う。怪談はもう懲り懲りだ。つまり、俺の乳首が武士化しつつあるとか・・・」
「マジで?」
「毎回言っている気がするが、そういう口のきき方は止めろ。俺もまさかとは思うが、れもんちゃんには不思議なパワーが詰まっている。れもんちゃんは何か異変を感じ取っているのかもしれない」
「う~む。父上の乳首が武士であるとのお疑いでござるな。そもそも身体の一部が武士化するとは嘘臭い」
「お前がそれを言うな。お前が突然、『拙者、シン太郎左衛門』と名乗り出たのも約10年前、そんなに昔のことではない」
「おぉ、そうでござった。気が付いたら、こんな所で、こんな風になっておったのでござる」
「ちなみに、それに先立つ記憶はないのか?」
「それが、その前となると、アヤフヤで断片的で脈絡のない記憶しかござらぬ」
「言ってみろ。お前の前世に関わるものであれば、今こそシン太郎左衛門が誰なのか明かされるかもしれん」
「う~む・・・例えば、若いドクターやインターン、看護師たちを大勢引き連れて大学病院の廊下を歩いている記憶。祭りの出店でお好み焼きを焼いてる記憶。裏長屋で赤子をあやしながら傘張りをしている記憶。腰簑だけを身に纏い、石の鏃を着けた槍を手に猪を追う記憶。東京スカイツリーの見える場所にキッチンカーを停めてクレープを焼いている記憶。夜泣き蕎麦の屋台を引いている記憶。カレー専門店でバイトをしている記憶・・・」
「お前、誰だよ?そのごちゃごちゃした記憶の数々、一つの人生に収めるには時代的にも振幅が激しすぎるし、後半はほとんど飲食業だ」
「食は大切でござる」
「当然だ。ただ俺は、今、食の重要性を問題にしていない。お前が武士だということの尤もらしい説明を期待して聞いてたら、辛うじて武士を感じさせるのは裏長屋に住む傘張り浪人だけだ。お前の記憶を信じれば、次回からクチコミの出だしは、『我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士(おそらく浪人)の生まれ変わりなのだが、財前教授や縄文人、またクレープ屋さん等であった可能性も否定できない』としなければならん」
「記憶などというものは所詮頼りないものでござる」
「それはそうだ」
「加えて、拙者、誰かの生まれ変わりではござらぬ」
「そうか・・・まあいい。目下最大の問題はそんなことではない。俺の乳首が武士化しているかどうかだ。俺たち二人だけなら、クチコミのセリフもどっちが言ったかか一目瞭然だが、今後『ござる』調のヤツが増えてしまったら、誰の発言なのか一々書き記さなければならなくなる。とても煩わしい。大問題だ」
「うむ。拙者は賑やかになって嬉しい」
「シン太郎左衛門、話し掛けてみろ」
「ん?」
「チクビ左衛門だか知らんが、いるとすればお前の同類だ。お前の呼び掛けには応えるだろう」
「うむ。承ってござる」
シン太郎左衛門は立て続けに咳払いをすると、「では、参りまする」
「頼んだぞ」
「頼もう・・・頼もう・・・」
応えはなかった。
「・・・誰もおらぬようでござる」
「シン太郎左衛門、そんな遠慮がちにやっては埒が明かん。ズカズカと家に上がり込む感じでいけ」
「無礼ではござりませぬか」
「問題ない。俺が大家だ」
「うむ。では・・・御免つかまつる・・・もし、入りまするぞ・・・ガラガラガラ・・・これは玄関を開けた音でござる」
「察してる。続けてくれ」
「うむ・・・誰かおられませぬか。拙者、シン太郎左衛門と申す武士でござる。チクビ左衛門殿、ちと話がござる・・・チクビ左衛門殿・・・」
やはり応えはなかった。
「誰も答えないな。シ~ンとしている」
「留守でござる」
「念のため、もう一度やってみろ」
シン太郎左衛門は「チクビ左衛門殿、おられませぬか!チクビ左衛門殿~!!」と声を張ったが、やはり返事はなかった。
「何の気配もない。ただシ~ンとしてござる。シ~ン太郎左衛門でござる」
「・・・オヤジギャグだ」
「うむ。オヤジギャグでござる」
「実は、れもんちゃんはオヤジギャグが好きなのだ」
「拙者も存じておりまする。以前、れもんちゃん自身が、そう仰せでござった」
「つまり『シ~ン太郎左衛門』は、れもんちゃんに受けると思って言ったんだな」
「この場面は、れもんちゃんにバカ受けでござる」
「俺には、とても詰まらなく思えた。念のために、もう一度言ってみろ」
「シ~ン太郎左衛門」
「いや、俺は、もう一度チクビ左衛門に呼び掛けてみろという意味で言ったんだ。でもいい。この話、これ以上展開しそうな気がしない」
「うむ。そもそも、チクビ左衛門のいる・いないは、れもんちゃんに確認すれば分かることでござる」
「・・・本当だね」
そして、れもんちゃんに会ってきた。分かっていたが、れもんちゃんは、やはり凄すぎた。
帰り際、「れもんちゃんには、チクビ左衛門が見えるの?」と尋ねたら、れもんちゃんは可愛く首を傾げて、「それは言えない。ヒミツだもん」とのことだった。
帰りの電車で、シン太郎左衛門に、
「チクビ左衛門については秘密だと言われた」
「うむ、れもんちゃんには秘密が一杯でござる」
ということで、私の胸の辺りにムスッと押し黙った武士たちがいるかもしれないという疑念は今のところ晴れていない。
シン太郎左衛門と沈黙の武士たち様ありがとうございました。
けい【VIP】(23)
投稿者:マツナガ様
ご利用日時:2023年10月20日
仕事の都合で午後から時間がとれたので、初めてこちらのお店を利用しました。電話対応してくれたスタッフのおすすめでけいさんに入りました。
とても奇麗な方だったので緊張してしまいましたが、リードしてくれたのですぐにそれもほぐれました。
プレイ内容は申し分なく、ベッドだけでこんなに凄いプレイをしたのは初めてでした。濃厚とか激しいとか、そんな言葉では表現できないもので、大満足でした。
プレイ後は仕事やペットなどの話でまったりとした時間を過ごせました。ぜひまたお願いします。
マツナガ様ありがとうございました。
れもん【VIP】(23)
投稿者:シン太郎左衛門(あるいは生き物たちの記録)様
ご利用日時:2023年10月15日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士らしい。今更、実は武士ではないとなったとしても、誰にも言わず黙っておくだろう。
先週のはじめ、偏頭痛がひどくて仕事を休んだ。水曜日は、頭痛は治まっていたが、ズル休みして、昼前までぐっすり寝た。腹も減ったし、コンビニに買い出しに行くため、モゾモゾと布団から這い出すと、シン太郎左衛門が、
「泥のように眠っておられましたな」
「うん、お蔭ですっかり生き返った」
「・・・こうして見ると、父上は、日本人離れした顔立ちですな」
手の甲で両目を擦りながら、「そうかね。どこの国の人に見える?」
「モグラ。穴から引っ張り出されたモグラにしか見えぬ」
「なるほど」
「コンビニに行く前に髭を剃ってくだされ。その顔のまま、万が一にも、れもんちゃんに出くわしたら一大事でござる」
「こんな何もない田舎町に、れもんちゃんが現れるはずがない。れもんちゃんは女の子休暇中だから美容院に行って、可愛さに磨きをかけている頃だろう」
「間違いござらぬ」
「そういうことはないと思うが、空飛ぶ円盤を見掛けたら、急いで引き返して髭を剃ろう。れもんちゃんは、れもん星人だから、移動には円盤を使うのだ」
「うむ。ところで、れもんちゃんの円盤はどんなものござるか」
「見たことがない。多分、軽だろう。色は、レモンイエローだ」
「うむ。きっとナンバープレートには『れもんちゃん』と書いてござるな」
そんな他愛ない話をしながら、マスクで顔を隠して家を出るなり、隣家の奥さん、つまりニートの金ちゃんのお母さんに出くわした。
私の顔を見るなり、「あら、お休みでしたの?」と、嬉しそうに話し掛けてきた。私に会って嬉しそうにする人間は滅多にいないし、金ちゃんママにしても平素は特に愛想がいいわけでもない。多分頼み事だと思ったら、案の定、「実は・・・」と頼み事を始めた。
彼女の話を纏めれば、「夫婦揃って法事のため明日の晩まで家を空けねばならぬが、留守を頼むはずの息子がインフルになってしまい、ペットの世話と、出来れば息子の世話も併せて頼みたい」ということだった。金ちゃんはともかく、ラッピーともんちゃんの為なら一肌脱ぐしかなかった。
金ちゃんパパママの車が出て行くと、私は預かった鍵で隣家の玄関のドアを開けた。
「よしよし、米が炊けた匂いがする」と言うと、シン太郎左衛門は呆れた様子で、
「金ちゃんのお母上、驚いておりましたぞ」
「そうか?」
「うむ。留守番は任せてもらって結構だが、任された以上、徹底的に留守番して、ラッピーたちの散歩を除いて一歩も家を出ない、買い物にも行かない、腹が減ったら、お宅の冷蔵庫にあるものを食べる、早速飯を炊いてくれ、とは中々言えないことでござる」
「そうか」
「留守番ぐらいで恩義に感じてもらう必要もないし、お土産は絶対に要らない、お土産に美味いものはなく、持て余すだけだ、とも、普通は言わぬ」
「俺は儀礼的なことに興味がないのだ」
「うむ。少しは興味を持たれた方がよろしかろう」
金ちゃん宅に上がり込むと、まずダイニングキッチンに入り、炊飯器の飯を確認し、冷蔵庫から食材を選び、調理を始めた。
「チンジャオロースを作る」
「うむ」
「卵スープ付きだ」
「うむ」
「デザートはシャインマスカットだ」
「うむ」
「整理も行き届き、使いやすい、よい台所だ。冷蔵庫も食材満載だ。楽しくなってきた」
「他人の家だという遠慮がまるでござらぬな」
「腹拵えを済ませたら、ラッピーともんちゃんと散歩だ」
「うむ」
「帰ってきたら、れもんちゃんのことを考えながら昼寝だ」
「楽しみでござる」
昼飯を済ますと、コーヒーを淹れて、ゆっくりと寛いだ。ラッピーともんちゃんの居場所はリビングだった。食器洗いを済ますと、リビングのドアをノックして中に入った。ラッピーは雌のラブラドールレトリバーで、もんちゃんはキジトラの雌の子猫だった。早速ラッピーが歓迎して飛んできたが、もんちゃんは警戒して部屋の隅に引っ込んでしまった。
ラッピーの澄んだ優しい眼差しはステキなものだった。彼女の頭を撫でながら、「お前は、れもんちゃんの次に美しい目をしているな」
ラッピーにインディアン・ダンスを教えたり、一緒に「オクラホマ・ミキサー」を踊ったり、楽しく過ごしていると、火照った顔の金ちゃんが入ってきた。金ちゃんは、「職業:ニート」が似合う、30前後のフリーのプログラマーだった。
「お、金ちゃん。インフルだってな。飯は食ったか?」
「プリン、食べました」
「何個?」
「一つ」
「もっと食え。プリンばかりでは飽きる。冷蔵庫にカップゼリーがあったから、それも食え。交互に合計50個食え。それで水飲んで、寝とけ。インフル野郎め、治るまで二度と出てくるな」
「ひどい言い方だなぁ」
「ひどくない。お前の為だ。俺に移したら、お前がラッピーの散歩をすることになるぞ」
「分かりましたよ」と出て行った。
廊下を歩く金ちゃんの足音を聞きながら、「よし、みんな、これから散歩に行くぞ。全員、集合。ラッピー、もんちゃんを連れといで。シン太郎左衛門、みんなに本日の散歩に関する注意事項を伝えろ」
「えっ、拙者が?」
「そうだ」
散歩にあたっての注意事項など一つも思い浮かばないシン太郎左衛門が、クラブロイヤルの利用規約の禁止事項を読み上げて、「1つ、18歳未満の方。2つ、暴力団関係者またはそれに準ずる方。3つ、・・・7つ、同業者のご利用、スカウト、引き抜き行為の禁止。8つ、カメラ・ビデオ機器による撮影・録音及び盗撮・盗聴行為の禁止・・・」などと言っている間に、私はラッピーともんちゃんにお揃いのタータンチェックのハーネスを付けてやった。
「よし、行こう。みんな、注意事項を守れよ。特にシン太郎左衛門、お前が一番心配だ」
「なんで拙者が」
爽やかに晴れた、泣きたくなるほど素敵な散歩日和だった。
「もんちゃんは川に嫌な思い出があるから、丘の上の公園に行こう」
坂をテクテク登り始めてから5分で、もんちゃんは早々疲れてしまい、ラッピーの背に乗せてやった。平日のこの時間、公園に向かう道には我々以外誰もいなかった。
「人目がないから、シン太郎左衛門、お前も出ていいぞ」
「おお、それはありがたい。ラッピー殿、背中に失礼致しまする」
公園にも人影はなかった。小さな公園で、遊具は滑り台とブランコがあるばかり。ベンチに腰を下ろすと、遠くの景色の隅々まで見渡すことができた。ひんやり冷たい風に吹かれてながら、雲一つない青空を見上げた。ラッピーともんちゃんが、じゃれ合っていた。
「動物は可愛いな。れもんちゃん以外の人間には、ほぼ興味が持てない。動物は可愛い」
「父上、少し寒くなってきました」
「だろうな、お前は全裸だからな。パンツの中に戻るか?」などと話していると、突然、ラッピーが南の空を見詰めて、一声吠えた。
ラッピーが見詰める先に目を向けると、小春日和の抜けるような青空を、かなり高度を下げて、ゆっくりと西の方角に向かって、超巨大な飛行物体が音もなく飛んでいた。
「シン太郎左衛門・・・れもんちゃんの空飛ぶ円盤は、軽ではなかった。いや円盤ですらないぞ。ほれ」
私が指差す先を見て、シン太郎左衛門は、「お、おっ!」と声を詰まらせた。
「サイズで言えば空母だな。空飛ぶ空母だ」
「あれが、れもんちゃんのマイカーでござるか」
「ああ、レモンのラッピングがしてあるからな。れもんちゃん以外に考えられない。パッと見たところでは長さは約500メートルだ。世界最大の空母よりもデカい」
「れもんちゃんは、小さな身体ながら、スケールが大きい女の子でござる」
「うん。それにお茶目でもある。船体に『マジカル・ラブリー・プリンセスれもん』と大書きしてある。その周りに輪切りにしたレモンや横から見た紡錘形のレモンが可愛らしく散り嵌められている。空飛ぶラッピング空母だ」
「うむ、自ら『マジカル・ラブリー』とは、中々言えませぬ」
「真実だから許される。むしろ、控え目すぎるぐらいだ」
「間違いござらぬ」
「ミサイル発射口みたいな物騒なものも、たくさん付いてるな」
「宇宙には危険が一杯でござる。流星が飛んできたら、レーザー光線やミサイルを発射して破砕せねばならぬ」
「れもんちゃん、カッコいいな」
「れもんちゃんは、カッコいいのでござる」
「きっと、れもんちゃんの行き付けの美容院は、れもん星にあるのだ。今、そこからの帰りだ」
「うむ。そう考えれば、れもんちゃんの『美容院に行ってきたよ~ん』という言葉には、大変な重みがございまするな」
「うん。れもんちゃん、凄いな・・・」
「やり過ぎでござる・・・」
「れもんちゃんは、いつもそうだ。可愛すぎるし、エロすぎるし」
「しかし、父上・・・こんなクチコミ、誰も信じますまい。あからさまに作り話に見えまする」
「それを言えば、お前が話をしている時点でアウトだ。れもんちゃんの凄さは、事実性の次元に囚われてはいないのだ」
「うむ。間違いござらぬ」
「よし、それじゃ、みんな」と私はグループのメンバーを呼び集めて、一列に並ばせた。
ラッピーは、のどかに飛行を続ける宇宙戦艦に向かって恋しさの籠った長い遠吠えをした。
「素晴らしい眺めだな」
「厳粛な光景でござる」
「よし、それでは、みんな、れもんちゃんに敬礼」
我々4人、いや正確には1人と2匹と1本は横一列に並び、敬礼の仕方を知る者は敬礼をして、優美に飛行する巨大な宇宙船が日の光を反射させながら視界の彼方に消え去るまで見送った。
「よし、帰ろう」
「うむ、そう致しましょう」
「シン太郎左衛門、れもんちゃんのお蔭で楽しい時間が過ごせたな」
「れもんちゃんは、やはり桁違いでござる」
「次に会ったとき、れもんちゃんの髪はサラサラだぞ」
「楽しみでござる」
縺れに縺れた二本のリードを解きほぐすと、我々は公園を後にした。
そして、今日も、れもんちゃんに会った。れもんちゃんは、やはり桁違いに凄かった。髪の毛はサラサラだった。
「れもんちゃんの行く美容院って、どこにあるの?」と訊いたら、「おうちの近くだよ」との答えであった。
我々は、その「おうち」が、れもん星の実家を意味することを知っている。
シン太郎左衛門(あるいは生き物たちの記録)様ありがとうございました。
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今朝、シン太郎左衛門の喚き散らす声で目を覚ました。「無礼者!」とか怒鳴っている。布団を捲って、「何の騒ぎだ」と言うと、シン太郎左衛門、はっと目を見開き、
「あっ、夢を見てござった」
「俺も夢を見ていた。お前の声に起こされた」
「拙者、れもん星に観光に行ってござった」
「俺もだ。お土産物屋で買い物をしている最中だった」
「拙者もでござる」
「それなら同じフライトに乗っていたに違いない。俺が見たれもん星の風景は関西国際空港にそっくりだった」
「拙者が着いたのは、港でござる。海が見え、小型のフェリーが停泊してござった」
「巨大な空母は泊まってなかった?」
「空母が入れるような港ではござらぬ。ごく小さな港でごさった。人影疎らな、哀愁が漂う景色、まるで『津軽海峡冬景色』でござった」
「それ、本当に、れもん星か?」
「れもん星に間違いござらぬ。閉まっておったが、『れもん星観光案内所』という看板を上げ、45度傾いた、崩れかけの建物がござった。その隣に鄙びた土産物屋が、店を開けてござった故、立ち寄ってみると、クラブロイヤルの入り口でいつも愛想よく出迎えてくれるスタッフさんとそっくりな人が『れもんちゃんグッズ、いかがですか』と声を掛けてきた」
「おお、それは入るしかないな」
「うむ。当然、入店してござる。すると、店内には陳列棚の一つもなく、ガシャポンが1台置いてあるばかり。『れもんちゃん缶バッジ』と手書きしてござる」
「それはステキだ。いいお土産になる」
「『1回千円』とあった故、店員殿に千円札を渡し、代わりに受け取ったコインでガシャポンを回し、カプセルを開けると・・・」
「うん」
「ただ一文字『も』と書かれた缶バッジが入ってござった」
「れもんちゃんの『も』だ」
「うむ。しかし、これでは、土産として頼りない故、もう一度千円払った。出てきたのは、またしても『も』。『れもん』でなく、『もも』になってしまった」
「悔しいな」
「いかにも悔しいので、また千円払うと、今度は『ん』が出た」
「近づいたな。次に『れ』が出れば、『れもん』が揃う」
「うむ。そう思って、また千円注ぎ込んだ。『が』の缶バッジが出てござる」
「並べたら、『ももんが』だ」
「うむ。いささか逆上して、今時珍しい二千円札でコインを2枚譲り受け、続けて2度回したら、『ず』と『き』が出た」
「『ももんがずき』になった」
「腹が立って、『無礼者!誰が、モモンガ好きだ!拙者、富士山シン太郎左衛門は生粋の絶対れもん主義者なるぞ!』と怒鳴った」
「なるほど、その夢はハズレだ」
「ハズレでござった」
「その缶バッジ、見てみたい」
「夢の中に忘れてきた」
「残念だ」
「うむ」
「それに比べると、俺の夢の方が、まだ良い」
「と言いますると」
「俺の夢の舞台は、関空のような場所だが、『歓迎 れもん星へようこそ』とカラフルな横断幕が掛かっていて、免税店のようなものが軒を連ねていた」
「華やかでよい」
「そうだ。人もたくさんだ。ふらっと散歩していると、一つのお土産物屋の前で、クラブロイヤルの入り口でいつも愛想よく出迎えてくれるスタッフさんとそっくりな人から『れもんちゃんグッズ、ありますよ』と声を掛けられた」
「拙者と同じでござる。同一人物に違いござらぬ」
「レモンイエローの法被を着てた」
「同じでござる」
「じゃあ、同じ人だ。明るい店内に入ると、なかなかの品揃えだ」
「ガシャポンは?」
「ガシャポンはなかった。れもんちゃんの等身大フィギュアがあって、非売品との札が掛かってた。本物には遠く及ばぬが、中々よく出来ていた。触ろうとして、怒られた」
「拙者の入った店とは、随分と違う」
「うん。ディスプレイもシャレてて、れもんちゃんのパネルが大小飾られている、とても居心地のよい空間だった」
「れもんちゃんがいる空間は居心地が良いに決まってござる」
「缶バッジもあった。それぞれ、れもんちゃんの全身写真、お顔のアップ、『れもんちゃん』とカラフルでポップな文字で記したもの等、5個セットで千円だった」
「・・・父上、拙者に喧嘩を売ってござるか」
「違う。あれこれ目移りしているうちに、『チームれもん』の黒いキャップに目が止まった。値札を見て、気を失いそうになったが、大奮発して買ってしまった」
「羨ましい限りでござる。その店は、関空にあるのでござるな」
「いや、そうは言ってない。関空にあれば、また行きたいが、そうではない」
「残念でござる」
「そのうち、店の奥の方にカーテンで閉ざされた入り口があるのに気付いた」
「それは、まさか・・・」
「うん。この奥、カーテンの向こうに、れもんちゃんが待っていると感じさせる雰囲気があった。少しドキドキしながら、『この奥、入っていい?』と訊くと、店員さんが『どうぞ、ご案内します』と快く答えてくれた」
「おおっ、それは期待が高まりまする。まさに、れもんちゃんとの御対面の場面そのままではござらぬか」
「そうだ。そして、クラブロイヤルのスタッフさんに似た店員さんが、お口のエチケットを軽く二度シュシュっとしてくれた後、カーテンを開けながら、にこやかに『カーテンの向こうに・・・』と言うので、勇んで一歩踏み出したら、カーテンの向こうには、まさに今カーテンを開けてくれたスタッフさんが満面の笑顔で立っていた」
「・・・スタッフさんの瞬間移動芸でござるな」
「そうだ。見事なテレポーテーションだった・・・でも、こういうものが見たかった訳ではないので、心底ガッカリした。ただ、お義理で拍手はした。その場面で、お前の怒鳴り声に起こされた」
「父上の夢もハズレでござる」
「そうだ。お前は6等、俺は5等だ」
「いい年をして、残念な夢の話で盛り上がっているとは、我々親子は救いようのない愚か者でござるな」
「そのとおりだ。しかし、実物のれもんちゃんにハズレや残念はない。いつも数万発の花火が打ち上がるような大当たりだ」
「いかにも。そして、今日は、れもんちゃんに会う日でござる」
二人揃って、ヘヘヘヘと、だらしなく笑った。
れもんちゃんは、今日もやっぱり宇宙一だった。この冬空に、百万発の花火が上がった。